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第30話 エレベーターにて・2
二人でドリンクばかり飲んでいた。
俺はずっと海斗にしがみついていた。
眼鏡には何の反応もない。
さっきから何度もお父さんにボタンを押しているのに、返事がない。
「ねえ、このエレベーターだけ止まってたら、誰か気づくよね?」
「うん、そのはずなんだけど……地下の管理室が状況を把握してるはずなんだよな。
だから、それがないのがおかしいんだよ」
「もう、怖いこと言わないでよ~」
それでも俺は、お父さんのボタンを押し続けた。
ペンダントはぴかぴか光ったままだ。
「そうだ! おばさん呼んでみるよ!」
「ああ、それはいいね。二人で呼ぼうか?」
「うん。――おばさーん!! おばさーん!!」
何度も呼んだ。でも、こういう時に限って出てこない。
「海斗……なんだか寒い。なんで?」
真夏だから、薄い半袖のTシャツとジーンズだけ。
海斗なんてタンクトップに半ズボンだ。
「うん……確かに冷えてきたな。なんでだろう?」
「海斗もウォッチ押してみて」
「押してるよ。何回も。でも反応がないんだ」
「おばさーん! おばさーん! 出てきてよ! なんで来ないの?」
「あなたのご先祖がピンチなんですよ~! 出てきてくださーい!」
海斗も叫んでくれた。
はあ……床に座ると、お尻から冷えてきた。
どうしよう……。
「あっ、そうだ!」
海斗が突然声を上げた。
「なに? どうしたの?」
エレベーターの背中側の壁を触り始める。
「あ、ここだ。きっとここだよ」
「え? なにが?」
海斗は中央の四角い蓋を開けた。
中に穴が空いていて、そこに指を入れて引っ張る。
「ええ?」
壁の扉が一気に外れた。
もう少しで二人とも尻もちをつくところだった。
「はあ……」
海斗も息が荒い。
「あのな、これ非常用のグッズが入ってるんだよ。
緊急用のストックだから、こういう時は使っていいんだ」
「え? そうなの? 何が入ってるの?」
透明のプラスチックの箱がいくつか。
あとはカバンのようなものもある。
薄暗くてよく見えない。
海斗が携帯のライトを点けた。
「ほら、懐中電灯があるよ」
点けてくれた瞬間、一気に明るくなった。
それだけで、ほっとした。
海斗はストックを全部引っ張り出していく。
バッグを開けると、ビニールに包まれた毛布が入っていた。
「ほら、とおる。毛布あるよ。掛けてあげる」
肩にかけてくれて、お尻の下にも敷いてくれた。
「海斗の毛布もあるの?」
「うん、あるよ。あと水もあった。飲む?」
「飲む……」
甘いドリンクしか買ってなかったから、水が嬉しい。
「あといろいろ入ってるな……あ、トイレあるよ」
「うん、したい」
「ふっ、俺もだよ。待って、組み立てるから」
段ボール箱を組み立てて、中にビニール袋を広げる。
便座になる蓋と、その上に乗せる蓋もあった。
「ああ、これは中に凝固剤を入れるみたいだよ」
海斗が凝固剤を入れてくれた。
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