31 / 35

第31話 エレベーターにて・3

 海斗が凝固剤を入れて、「先にしていいよ」って言ってくれた。 なんか恥ずかしかったけど、後ろ向いておしっこをした。 そしたら、ちゃんと固まっていた。臭いもしない。助かった。 それから海斗もトイレを済ませた。 はあ、これで何とか息をついた。 この世で一番大事なのはトイレだと知った。 非常用の荷物の中におしぼりティッシュも入っていた。 それで手を拭いた。 なんて気が利くんだろう。ありがたいよ。 「ねえ。ここにいてどれくらい経つの?」 「そうだね、4時間くらいかな」 「もう一度ヘルプしよう」 腕のウォッチのボタンを押しまくった。 そして叫んだ「おばさ~ん、出て来てよ」 海斗も「おばさ~ん出てきて。助けてよ」 何回も何回も、ドアを叩いたり。叫んだり。非常用の赤いボタンを押した。 でも一切の音が聞こえなかった。 「海斗、俺もう疲れた」 「うん、そばにおいで抱いてあげるから、くっついていようよ」 毛布を下に長く2枚重ねて敷いて二人で抱き合い、上に毛布を2枚掛けた。 毛布は4枚入っていたから助かった。 毛布が入っていたバッグを丸めて、海斗の枕にした。 海斗が腕枕をしてくれるから俺は要らない。 そして疲れてずっと海斗の胸に顔を寄せる。 海斗がぎゅっと抱きしめてくれた。 「海斗、いてくれてありがとうね。この世で一番大好きだよ」 「ふふ、この状況で告白してんの?」 「うん、だって今言わないと、あとでどうなるか分からないもん」 「そうだね、じゃあ、俺も言っとくね。とおる、この世で一番大好きだよ。一生そばにいて欲しいよ」 「なんでこんな時に一番うれしいことを言ってくれるの?」 ふふと海斗が笑った。 お互いに抱きしめながらぎゅっとさらに力を込めた。 そこへ、天使「あらよっと」 「え?おばさん、今頃出て来たの?おせえよ!」 俺は文句を言うぞ。 天使「だって、いい雰囲気なんだもん。お邪魔できないでしょう?イケメンを独り占めにしちゃってさ」 「おばさん、今そんなことを言ってる場合じゃないの!閉じ込められるんだよ。どうなってるの?」 天使「それね。院長も動いているから、それを伝えてくれって言われたのよ」 「はあ??どういうこと?」 「ねねね、とおる、おばさんはなんて言ってるの?」海斗が焦っていた。 「あのね。お父さんが動いてくれてるんだって、で、それをおばさんが伝えに来たんだって」 「はあ?父の知りないなんですか?」と海斗。 天使「う~ん、まあ、私からはあんまり言えないんだけどね、私は下っ端だからさ」 「おばさん、なんでお父さんはそんなことが出来るの?」 俺が聞いた。それを一番聞きたいよ。 天使「わかんないわよ。とにかく伝えたわよ。食べ物も水もあるみたいだから、もうちょっと頑張んなさいよ。じゃあね」 ふっと消えてしまった。

ともだちにシェアしよう!