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第31話 エレベーターにて・3
海斗が凝固剤を入れて、「先にしていいよ」って言ってくれた。
なんか恥ずかしかったけど、後ろ向いておしっこをした。
そしたら、ちゃんと固まっていた。臭いもしない。助かった。
それから海斗もトイレを済ませた。
はあ、これで何とか息をついた。
この世で一番大事なのはトイレだと知った。
非常用の荷物の中におしぼりティッシュも入っていた。
それで手を拭いた。
なんて気が利くんだろう。ありがたいよ。
「ねえ。ここにいてどれくらい経つの?」
「そうだね、4時間くらいかな」
「もう一度ヘルプしよう」
腕のウォッチのボタンを押しまくった。
そして叫んだ「おばさ~ん、出て来てよ」
海斗も「おばさ~ん出てきて。助けてよ」
何回も何回も、ドアを叩いたり。叫んだり。非常用の赤いボタンを押した。
でも一切の音が聞こえなかった。
「海斗、俺もう疲れた」
「うん、そばにおいで抱いてあげるから、くっついていようよ」
毛布を下に長く2枚重ねて敷いて二人で抱き合い、上に毛布を2枚掛けた。
毛布は4枚入っていたから助かった。
毛布が入っていたバッグを丸めて、海斗の枕にした。
海斗が腕枕をしてくれるから俺は要らない。
そして疲れてずっと海斗の胸に顔を寄せる。
海斗がぎゅっと抱きしめてくれた。
「海斗、いてくれてありがとうね。この世で一番大好きだよ」
「ふふ、この状況で告白してんの?」
「うん、だって今言わないと、あとでどうなるか分からないもん」
「そうだね、じゃあ、俺も言っとくね。とおる、この世で一番大好きだよ。一生そばにいて欲しいよ」
「なんでこんな時に一番うれしいことを言ってくれるの?」
ふふと海斗が笑った。
お互いに抱きしめながらぎゅっとさらに力を込めた。
そこへ、天使「あらよっと」
「え?おばさん、今頃出て来たの?おせえよ!」
俺は文句を言うぞ。
天使「だって、いい雰囲気なんだもん。お邪魔できないでしょう?イケメンを独り占めにしちゃってさ」
「おばさん、今そんなことを言ってる場合じゃないの!閉じ込められるんだよ。どうなってるの?」
天使「それね。院長も動いているから、それを伝えてくれって言われたのよ」
「はあ??どういうこと?」
「ねねね、とおる、おばさんはなんて言ってるの?」海斗が焦っていた。
「あのね。お父さんが動いてくれてるんだって、で、それをおばさんが伝えに来たんだって」
「はあ?父の知りないなんですか?」と海斗。
天使「う~ん、まあ、私からはあんまり言えないんだけどね、私は下っ端だからさ」
「おばさん、なんでお父さんはそんなことが出来るの?」
俺が聞いた。それを一番聞きたいよ。
天使「わかんないわよ。とにかく伝えたわよ。食べ物も水もあるみたいだから、もうちょっと頑張んなさいよ。じゃあね」
ふっと消えてしまった。
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