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第33話 エレベーターにて・5
「ねえ、ここにいてからどれくらい経った?」
海斗に聞いた。
「ええっとねえ、24時間+8時間かな」
「足してほしいよ」
うふふふ、と海斗が笑った。
「ホント、とおるって強いよ。俺はうれしい」
「なんで?」
「だってさ、医者って仕事はすごく不規則で長時間勤務だから、家にいる時間があまりないんだよ。だから、それに耐えられる人じゃないと無理だと思うんだよね」
「ふ~ん、そうなんだ……。じゃあ、寂しいって泣いちゃだめなの?」
「……とおるは泣くのか?」
「うん」と頷いた。
「困ったねえ。じゃあ、考え直そうかな?」
海斗の足をつねった。
「いててて……。大丈夫だよ、死なない程度に帰ってくるからさ」
「俺、今からナースになろうかな?」
クククと笑い出した。
「ナースの勉強は過酷だよ。いいのか?」
ううん、と首を横に振った。
また笑い出した。
「全くなあ~、困ったもんだ……」
天使「ほれ来た!」
いきなりおばさんが俺の前に出現した!
「あ、おばさん、何してたんだよ。俺たち、いつまでここにいればいいの?」
天使「うるさいわねえ~。かわいい顔して、もっと拝ませてよ」
俺の顎を持って、まじまじと眺めていた。
まあいいさ。見るくらい減るもんじゃない。
「あのさ、顔を見るのはいいんだけど、その後はどうなってるんだよ?」
天使「えへへへ、それを教えに来たんだよん。あのね、今裁判になってるんだよね」
「は? 裁判ってどういうこと?」
天使「だからあんた達を変えた犯人は捕まったんだけど、それを命令してる奴がいるわけよ。大物でさ」
「海斗、あのね。俺たちを“すり替えた”やつは捕まったんだけど、それを命令した上のやつを今裁判にかけてるんだって!」
海斗「そうなんだ。あの世って、どの世? だってさ、人間社会と変わらないじゃん」
天使「そうそう、そうなのよ。そこ大事。覚えておいてね。あの世に期待する人が多くて困るのよ」
「海斗、あのね、“あの世に期待する人が多くて困る”んだってさ」
海斗「じゃあ、人間はどうすればいいのさ?」
天使「なるようになるって。その時に考えればいいのよ」
「あのね、“なるようになるから、その時に考えろ”だってさ」
はあ……と海斗が深いため息をついた。
「おばさん、それでいつ頃になりそうなの? もうあまり食べ物がないんだけどさ。困るよ、水も少なくなってるしさ。死活問題だよ」
天使「う~ん、考えておくよ。あとどれくらいあるの?」
「あと2回分しかないよ」
天使「あっそう。了解」
シュワっと煙のように消えた。
「海斗、またおばさんが消えちゃったよ」
「全くねえ~。さっきの答えで急にやる気なくしたよ」
「海斗、そんなこと言わないでよ。俺は海斗と一緒だったら幸せだからさ」
海斗がじっと俺を見つめた。
「わかったよ。おいで」
両手を差し出して、俺を抱きしめた。
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