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第34話 エレベーターにて・6
「ねえ、もう食べ物がないんだけど、どうしよう?」
「あと何があるの?」
「お菓子はあるよ」
「じゃあ、お菓子を食べよう」
「うん。あとね、マカロニ」
「ふ~ん。マカロニは口に入れておけば、ふやけるんじゃない?」
「ええ~、やだよ~」
「ないよりいいよ。一応食べ物だからさ」
「うん、わかった」
「海斗、抱いて」
「いいよ」
ぎゅっと抱きしめてくれた。
顔を寄せると、息遣いまでふんわりとやさしい。
そのやさしさが好き。
切れ長の大きな目を見つめた。
「海斗、愛してるよ」
「俺もとおるを愛してるよ」
まっすぐ俺を見つめて言ってくれた。
また海斗の胸に顔をくっつけた。
「そういえばさ、俺たちずっと運動してないね」
「うん、それはやばいって思ってたんだよ」
「少しここで運動しようか?」
「でも動くとお腹空かない?」
「確かに……やめようか」
「そうだ。ねえ、また非常ボタン押そうか? そろそろ点かないかな?」
また全部のボタンを押した。
でもどの階も点灯しなかった。
どうなっているんだ。
なんだか絶望的な気持ちになってきた。
「俺たち、ミイラになって発見されるのかなあ?」
「まだミイラには程遠いから大丈夫だよ」
天使「はいよっと、ほら来た!」
「あ、おばさん! 何してたんだよ。俺たちもう死にそうなんだよー!」
天使「はいはい、わかってるって」
俺たちの前に、ごろごろと水のペットボトルが2本と、冷凍のそばが2個転がった。
天使「ああ~重かった。普段は重いもんなんか持たないんだよねえ~。
あんたんちの冷蔵庫から持ってきた。もうロクなもんなかったわよ。どうすんの?」
もう反論する気力もなかった……。
とりあえず喉が渇いていたから、俺たちは水をガブガブ飲んでしまった。
「おばさん、あとどれくらい待てばいいの? もう俺たち、死んじゃうよ~」
もう喋るのもしんどかった……。
天使「へっへっへ~、すごいニュースを持ってきたんだよん」
「え====っ? なあに?」
「あのね。お父さんから伝言なんだけど、ここを出たら“すれ違った時間まで巻き戻せる”んだって。
ただし、この3か月の記憶はどうするか聞いといてって。
記憶をなくすことも、残すこともできるんだって。どうする?」
思わず海斗を見た!
「ダメです! 記憶はなくさないで!
俺はとおるを愛してるから、忘れたくない!」
海斗が叫んでくれた……。
涙があふれて……止まらなくなった。
「う、う……はあ……」
嗚咽が止まらない。余計に海斗に縋りついた。
「……あのね、おばさん、今の聞いた?
俺も同じ。記憶はなくさないで……。
___え? あれ? 海斗、今のおばさんの声、聞こえたの?」
「……あ、ホントだ。聞こえた!……なんでだろう?」
天使「OK!」
シュワッとまた消えた。
それからさらに2時間以上……。
もう本当に心が限界だった。つらい……。
俺は泣き続けた。
海斗を見ると、やっぱり涙があふれていた。
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