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第35話 エレベーターが‥‥‥
そうして、いきなりパッと天井のライトがついた!
「え? 点いた!!」
そしてドアが開いた!
ふたりで飛び出した!
「海斗!!」
「とおる!!」
俺たちは身体が元に戻っていた。
思わず抱きついた。
う、う、う……また涙が止まらない……。
「あらまあ~、おはようございます。どうなさったんですか?」
「ちょっと、やめなよ。余計なお世話じゃないの??」
と、二人のお掃除のおばさんに声をかけられた。
「あっ、海斗、荷物! トイレも!」
そうだ、エレベーターのドアは開いたままだった。
バッグと荷物は出したけど……、
あれ? トイレがない。
毛布もなくなって消えていた。
「海斗、見て、消えてる!」
「あ、消えてる……」
そして出したはずの買い物の荷物も……消えてた!
なんで?
いつのまに……。
でもバッグだけはある。
財布を確かめた。
「ねえ、買い物したはずなのに、お金が元のままある。レシートもないよ」
海斗が携帯を出して見た。
「あ、日にちが……3か月前……? に戻ってる?
とおる、俺たちが入れ替わったのいつだっけ?」
「えっと、4月の2週目の土曜日の午後だろう? モデルの仕事があっただろう?」
そこへ海斗に電話がかかってきた。
「一条君。仕事ドタキャンするつもりなの? なんで来ないの? 違約金を払わせるわよ。すぐ来なさい!! ガチャ」
「やばい、モデルの仕事をする前に戻ってる。俺、大急ぎで渋谷のモデル事務所に行かないと! 大変だ」
「わかった。じゃあ俺も一緒に行くよ。もう離れるのやめよ。
また変わったら困るからさ」
「うん、そうしよう」
二人で手を繋いで渋谷のモデル事務所に走った。
もうタクシーを拾った。
ドキドキしながらも、手を握りしめて見つめ合った。
そしてモデル事務所に着いた。
「すみませ~ん。トラブルがあって遅れました」
「遅いわよ。なに、その子は?」
「あ、俺を助けてくれた子です。後でご馳走したいんで連れて来ちゃったんです。
すみません、待たせてもいいですか?」
「あ、そう。うん、いいわよ。じゃあ端っこのほうにいてね」
「すみません」
俺も謝った。
そして、モデルの仕事をする海斗に見とれていた。
やっぱり本職は違うなあ。
俺がやった時はどうだったんだろう?
冷や汗が出る。
あ~お風呂に入りたい。ご飯が食べたい。
でも海斗の仕事は15分くらいで終わった。
そして外に出た。
「海斗、お父さんに電話したら?」
「あ、そうだった」
すぐ電話を掛けていた。
「あ、お父さん? ありがとう、俺たち戻ったよ」
「うんそうか、よかったな。まあ大変だったと思うけど、もう大丈夫だから安心しなさい」
「うん、わかった。とおるがありがとうと言ってるよ」
「ふ、知ってる。まあ、仲良くやんなさい。ガチャ」
あれ? 勝手に電話が切れた。
海斗の手を引っ張った。
「お父さん、知ってたでしょう?」
「うん。とおるの気持ち、知ってた」
「えへへへ」
「え?何か通じ合ってたの?」
「ううん、違うよ、でもなんかわかるの」
「ねえ、食べて帰らない? お腹空いた!」
「何食べる?」
「もう一番近いとこでいいよ」
近場の居酒屋のランチ定食を二人で食べた。
「美味しいね」
「うん、うまいよ」
「食べたら早く帰ろう。あ、買い物しないといけないけど」
「そうだね。買ったものが消えたのって不思議だね」
「うん。でもまた買うの嫌だな……」
「なんで?」
「だって、エレベーターの中を思い出すんだもん」
「じゃあ、冷凍ばっかり買えば?」
「そうする」
ふふふ……二人で笑った。
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