42 / 65
第42話 道玄坂
2学期が始まって2週間が経った。
土曜日が来るたびに心が波立つ。
渋谷に行けば、海斗を遠くから見られるんじゃないか?
モデル事務所の近くの方がいいかな?
そんなことばかり考える。
でも今日は我慢ができなかった。
あの渋谷の、入れ替わったあの場所。
あそこなら海斗に会えそうな気がした。
いや、会うためじゃない。
それじゃあ台無しだ。
少し離れたところ、道玄坂のビルの2階のカフェにいた。
そこからなら、あのモデル事務所に向かう海斗の姿が見える。
俺はマスクをしてキャップを被っていた。
そして窓際にずっと座っていた。
1回でも見られたら、それでいい。
_____もう1時間は座っていた。
今日が仕事の日かどうかは分からない。
でも、少しでも可能性があれば会いたかった。
あと2時間待って会えなかったら諦めよう。
そう決めて、コーヒー一杯で粘った。
そして、ついに海斗はやって来た。
ラフな白いTシャツに、黒いぴったりしたジーンズ。
チェーンのようなシルバーのネックレス。
金髪だからよく目立つ。
元気そうだった。
でも、何かの拍子に彼がちらっと俺の方を見た気がした。
は? 俺のことが分かったのかな?
まさか……心臓が止まりそうだった。
でもそのままモデル事務所の方へ歩いて行った。
ふうう___息が止まるかと思った。
でも会えたから、それでよかった。
安心して、あのすれ違った交差点の手前に行った。
しばし立ち止まって、あの日のことを思い出していた。
なんの運命なんだろう?
あれから、まるで俺の心を試すようにヒートが始まった。
やっぱり俺はオメガの身体なんだ。そう思った。
一番後悔したのは、海斗の匂いがする服をもらってこなかったこと。
本当に、それが欲しかった。
抑制剤を飲んでもなかなか効果が出なくてつらかった。
それでも学校を3日休んだだけで頑張った。
周りにフェロモンが漏れないか心配だったけど、大丈夫だったようだ。
大学ではなるべく遅く行って、後ろの端っこに座った。
俺はこうやって、これから3年間を過ごすんだ。
忘れてはいけない。
心に刻んだ。
ともだちにシェアしよう!

