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第42話 道玄坂

 2学期が始まって2週間が経った。 土曜日が来るたびに心が波立つ。 渋谷に行けば、海斗を遠くから見られるんじゃないか? モデル事務所の近くの方がいいかな? そんなことばかり考える。 でも今日は我慢ができなかった。 あの渋谷の、入れ替わったあの場所。 あそこなら海斗に会えそうな気がした。 いや、会うためじゃない。 それじゃあ台無しだ。 少し離れたところ、道玄坂のビルの2階のカフェにいた。 そこからなら、あのモデル事務所に向かう海斗の姿が見える。 俺はマスクをしてキャップを被っていた。 そして窓際にずっと座っていた。 1回でも見られたら、それでいい。 _____もう1時間は座っていた。 今日が仕事の日かどうかは分からない。 でも、少しでも可能性があれば会いたかった。 あと2時間待って会えなかったら諦めよう。 そう決めて、コーヒー一杯で粘った。 そして、ついに海斗はやって来た。 ラフな白いTシャツに、黒いぴったりしたジーンズ。 チェーンのようなシルバーのネックレス。 金髪だからよく目立つ。 元気そうだった。 でも、何かの拍子に彼がちらっと俺の方を見た気がした。 は? 俺のことが分かったのかな? まさか……心臓が止まりそうだった。 でもそのままモデル事務所の方へ歩いて行った。 ふうう___息が止まるかと思った。 でも会えたから、それでよかった。 安心して、あのすれ違った交差点の手前に行った。 しばし立ち止まって、あの日のことを思い出していた。 なんの運命なんだろう? あれから、まるで俺の心を試すようにヒートが始まった。 やっぱり俺はオメガの身体なんだ。そう思った。 一番後悔したのは、海斗の匂いがする服をもらってこなかったこと。 本当に、それが欲しかった。 抑制剤を飲んでもなかなか効果が出なくてつらかった。 それでも学校を3日休んだだけで頑張った。 周りにフェロモンが漏れないか心配だったけど、大丈夫だったようだ。 大学ではなるべく遅く行って、後ろの端っこに座った。 俺はこうやって、これから3年間を過ごすんだ。 忘れてはいけない。 心に刻んだ。

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