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第44話 海斗サイド・図書館

 医大の四年になった。臨床研修がどんどん入ってくる。 俺たちは受け入れ先から“お客様”と言われているらしい。 その通りだ。何もできない。知識も技術も資格もない。 言われるがまま動くしかない。しょうがない。 まだ始めたばかりで、医師免許もないんだから。 見返すためには、少しでも勉強するしかない。 暇さえあれば図書館に通っていた。 今日も向かっていたところ、 俺の前を歩く二人連れの男の方が、とおるに似ている気がした。 まさか……女を連れて歩くか? わざわざここに? 歩く速度を落とし、柱の陰に隠れた。 二人は図書館の受付で何かを聞いていた。 横から見えた横顔は、確かに懐かしいとおるだった。 じゃあ、隣は女子学生か? なんだろう。何しに来たんだ……? 俺は気づかれないように、二人の後をつけた。 すると、医療事務関係の棚に向かっていった。 あ、もしかして…… うちの病院に入るために医療事務を勉強するって言ってたな。 そのために来たのか......。 努力を忘れてないんだな。 堪らなく愛おしくなった。 はあ……誰にも聞かれないように__でも大きくため息をついた。 どうしよう……会いたい。 でも今はダメだ。 とおるが俺から離れた理由を忘れるな。 俺に勉強させるためだ。 今は顔を合わせちゃいけない。 でもしばらく、陰から見守ることにした。 あの女子学生……もしかして、とおるに気があるのか? そんな感じがする。でも、とおるは全然気づいていない。 ふっ、よしよし。その調子だ。 女の子が盛んにとおるの気を引こうとして話しかけてるのに、 とおるは本に夢中だ。 ククク……なんだか笑える。とおるらしい。 確か、父が「医療事務の即戦力になれ」と言っていたな。 とおるはそれをプレッシャーに感じてるんだろう。 可愛いやつだ。 でも、忘れずに努力してくれていることが、すごく嬉しい。 俺のためなんだよな? とおる……愛してるよ。

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