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第52話 大学病院に入院
それからの入院生活は__よく分からなかった。
自分の身体がどうなっているのか。
ただ、まったく動かすことができなかった。
時々ナースが来て、点滴を替えたり熱や血圧を測っては出ていく。
俺は眠ってばかりで、ほとんど記憶がなかった。
そのうちに医師がやって来た。
「葉月さん、分かりますか? 分かったら目を開けて声を出してください」
耳元で大声で呼ばれて、仕方なく目を開けた。
「……はい」と小さく声を出した。
「葉月さんはね、校舎の階段から二階分くらい落ちちゃったんだよね。
あそこね、毎年誰かしら落ちるんだよ。いい加減エスカレーターにしてくれればいいんだけどねえ」
ああ……そうか。
俺は大学病院に運ばれたんだ。
「今、どこか痛みますか?」
そう聞かれても、分からない。
動けないから、どこが痛いのかも判断できない。
答えられないまま、医師は続けた。
「一応ね、救急に運ばれた時にCTとMRIで検査してます。これは異常なし。
ただね、後頭部を相当強く打ってるんだよね。
裂傷が五センチくらいかな。結構出血しちゃったんだね。
でもホッチキスで止めておいたから、三日後に抜糸します。
あとね、衝撃で頸椎をちょっとひねったかな。まあ軽いんだけどね。
今は首を固定してるけど、めまいや吐き気はしばらく続くかもしれないよ。
まあ徐々に治るから安心してね。
あとは全身の打撲。骨は折れてないよ。
一週間くらいで退院できるけど、つらいなら延ばしてもいいからね。
はい、ではお大事に」
喋るだけ喋って、医師は出ていった。
そっと、点滴じゃない方の手を動かしてみた。
あ、動く。
でも、おしっこの管が入っている。
足に何か引っかかる。
そうか、足は動くんだ。
でも寝返りはできない。
首には幅広いコルセットのようなものが巻かれていて、完全に固定されていた。
これは、誰が見ても重症に見えるな。
今は何を考えても、しょうがない。
ただ眠るしかなかった。
そのうちに友子たちがやって来た。
俺がそっと目を開けると、友子が泣いていた。
「葉月君、大丈夫? 心配したんだよ」
そう言って、俺の手を握った。
「とおる、大丈夫かよ? なんか悲惨だな。痛いか?」
その声は吉田だ。
「とおる、大変だったな。何とか頑張れよ。
少しだけど、みんなからのお見舞金だよ。引き出しの中に入れておくね」
樋口が小さな声で言ってくれた。
「……ありがとう」
それだけは言えた。
「じゃあ葉月君、私たち帰るね。時間が制限されてるんだよ。
また来るからね」
友子が名残惜しそうにしながら、みんなと帰っていった。
お見舞い金をくれたんだ......。
ありがたいよ。
そして俺は、また眠った。
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