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第56話 就職のレクチャー
駅前のスーパーで少し買い物をして帰宅した。
ああ~、居なかった分の家賃が勿体なかった……なんて考えてしまった。
買い物を片付けて、すぐご飯だけ炊いた。
冷蔵庫に残っている野菜を全部入れて、味噌汁だけ作った。
あとはすぐ食べられる納豆、豆腐、厚揚げ、卵を買ってきた。
これ全部たんぱく質だもんね。
ご飯が炊けておにぎりを作り、食事を済ませると、どっと疲れが出てきた。
お風呂に入りたかったけど……無理。
そのまま倒れ込むように眠ってしまった。
*
その後、日々は過ぎていき、もうすぐ年末だ。
卒論は悪戦苦闘の末、十二月末に提出した。
結果が分かるのは一月の中旬から末にかけて。
なんとか一月以内にパスしないと、お父さんとの約束が守れない。
年末から正月にかけての冬休みは短いけど、
午前はレセプトの勉強、午後だけ四時間バイトした。
本当はもっと働くべきなんだけど、階段から落ちたことを考えると、
やっぱり夏休みに無理しすぎたなと思った。
後悔はないけど、反省はしている。
今度から校舎のあの階段は使わず、エレベーターに乗ろうと思った。
学生は遠慮して使わない雰囲気だったけど、気にしないことにした。
そして年が明けた。
正月が終わるとセールが始まる。
俺は靴下、ワイシャツ、ネクタイ、スーツを二着買わないといけなかった。
就職用だ。安いのでいいから必要だ。
あと靴も。これもしょうがない。
安いのを買った。
病院のホームページを見ると、寮は病院のそばにある。
朝晩の食事付きだそうで助かる。
大きな食堂があって、セルフで受け取るらしい。
部屋はワンルームで、小さなキッチンやバスルームがある。
そして大浴場があるんだ。
最高だ! すっごくうれしい。
もう楽しみでしょうがない。
ああ~早く卒論の通知が来ないかな。
渾身の卒論だよ。
みんなどんなのを書いたんだろう。
いや、人に聞くと落ち込むからやめよう。
そして、お父さんからメールが来た。
医療事務のレクチャーをしてくれる人をよこしてくれるんだって。
その話は海斗と会った頃に聞いていた。
教えてくれる場所はホテル。
レクチャーが終わるまではホテルに滞在するらしい。
卒論の結果がまだ出ていないので不安だったけど、ホテルへ向かった。
約束の時間にホテルのロビーに行くと、
五十代くらいの真面目そうな男性が立っていた。
「初めまして、葉月とおるです。どうぞよろしくお願いします」
「初めまして。院長から派遣された菅野一郎です。よろしくお願いします」
俺はパソコンや教科書、資料を持って行っていた。
案内されたのは、上の階にある八人くらい座れる小さな会議室だった。
そこで、なぜか病院の経営について、現在の状況の説明が始まった。
資産や取引銀行まで、細かな説明があった。
今の病院の状況は分かったけど……なんでだろう?
それは一時間ほどで終わり、次は病院の人事についての説明があった。
病院の組織図を渡され、
どういう形で何人働いているか、派遣会社はどこか、
フーズ関係まで細かく説明を受け、プリントももらった。
それでまた一時間が過ぎた。
「食事でもして、少し休みましょうか?」と言ってくれた。
……それにしても、医療事務の説明じゃないの?
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