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第61話 秘書室

 その後は隣の秘書室に案内された。 そこには、ただ机が1つあるだけで、他は本棚やロッカー、ソファにセンターテーブルがあった。 ワゴンの上にはポットやお茶セットまである。 これじゃあ、院長室とそんなに変わらないよね? どういうことだろう? 菅野部長が説明してくれた。 「葉月さんね、本当は“院長秘書”という部署は今回、葉月さんのために作ったんです。 今まではありませんでした。 でも院長が海斗さんと一緒になるなら、その準備をしないといけないと言われて、院長付きの秘書にされたんですよ。 これは病院内の秩序を守るためでもあり、葉月さんを守るためでもあります。 この前、医療事務について質問して理解度が分かったので、 もう事務室で勉強しなくていいです。 むしろ事務室に1年いてその後に海斗さんと結婚されるなら、 一気にみんなの羨望や嫉妬の対象になってつぶされますよ。 だからこういう“専属の秘書”という形にしました。 院長の思いやりですよ。良かったですね。 葉月さんは簿記2級まで取っているから、 これからは海斗さんを助けられるように、 経営などを支える仕事を覚えてください。 良いですね?」 「はい、分かりました。ありがとうございます。 ……あのう、ここに一人でいていいんですか?」 「はい、いいですよ。今、仕事を持ってきますからね。 まあ、荷物など片付けて自由に部屋を使ってください。では」 なんと贅沢なことだろう。 お父さんには感謝しかない。 将来のための布石? ああ、もう海斗と一緒に歩む将来が見えた。 お父さんが見越して準備してくれたんだ。 海斗と一緒になることを許してくれているってことかな。 ありがたい。ただ感謝しかない。 今まで頑張ってきて本当に良かった。 その後は、菅野部長が持ってきてくれた仕事をコツコツとやった。 今までのレセプトの確認で、間違いがないかを見てほしいと言われたんだ。 眺めていると、やはり海斗と一緒に勉強したことが全部役に立つ。 パソコンのアプリを使うから、人間が入力を間違えなければ問題ない。 でも、うっかりってあるからね。 それをチェックしてくれと言われた。 毎日持ってくるそうだ。 うわ~、やりがいが多すぎる。 うれしい悲鳴だ。

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