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第64話 秘書の順調な滑り出し
毎日毎日、レセプトと闘った。
まさに闘いだよ~。
目がおかしくなりそうで、目薬を持参だ。
そして初めて、「おや?」と思うものを見つけた。
秘書室には医学書がないんだけど、
でも、院長から渡された“閲覧権限”がある。
パソコンを開いて、医師専用の薬剤データベースにログインした。
納得のいかないものを見つけたから調べた。
「……やっぱり、この薬は腎機能が重度の人には禁忌だ」
次に症例データを確認する。
「この病名で、この薬は出さないよね……」
海斗に教わったノートを開く。
“eGFR30以下はメトホルミン禁忌”
「……一致してる」
俺は静かに付箋を貼った。
これをもらった人はどうなったんだろう?
まだ間に合うなら止めた方がいいけど……菅野部長に聞いてみよう。
総務室に行った。
「菅野部長、ちょっと心配なのを見つけたんですけど、患者さん心配で……」
付箋を貼ったレセプトをそのまま渡した。
それを見た菅野部長は、
「あいた~、やっちまったな。ありがとう、分かりました。これは院長に報告しないといけないな」
その後は知らないけど、あとは任せたわ。
あとは黙々とレセプトのチェックを続けた。
あれ? また変なのを見つけた。
患者は子どもなのに、大人と同じ量の薬が出ていた。
大変だ。間に合うかな? またすぐ菅野部長のところへ持って行った。
「菅野部長、ちょっとこれなんですけど、もう薬が出ていますが、お子さんだから大丈夫でしょうか?」
レセプトを見ると、
「あいたたた、まただよ。はい、了解。誰かナースを呼ばないと駄目だな……」
そのまま戻った。
結構よく見るとミスってあるんだな。
医師は忙しいから大変なんだね。
それにしても、今まで誰がこういうチェックをやっていたんだろう?
不思議だよ。
で、次に見つけた疑問。
ある時期から薬を変えてるのに、突然もとに戻ってる。
良いのかなあ? これって聞いた方が良いのかどうかが分からない。
余計なお世話かもしれないけど……。
よし、怒られても良いから確認した方が良いよな。
俺は付箋を付けて、また菅野部長のところへ行った。
俺の顔を見ると、なんか頭を抱えていた。
俺って疫病神?
ふっ、いやこれは大したことがないと思うけどね。
「菅野部長、いいですか?」
「またなんか見つかりました?」
「あのう、余計なお世話かもしれないんですけど、
この患者さんはある時期から薬が変わってるんですよ。
でも今回は元に戻ってるんです。
聞いた方が良いのか、余計なのか、ちょっと判断がつきかねるんです」
「はい、分かりました。確認しますね。こればかりは医師に聞かないとしょうがないですもんね」
「はい、ではよろしくお願いします」
そういうわけでレセプトを置いてきた。
あー、これで一件減った。
今日の夕飯は何かな。
もう楽しみでしょうがない。
自分で作らないでいいって素敵すぎる。
大浴場にも早く入りたいよ。
入ったらのんびりしようっと。
仕事が終わって院長に挨拶をしたら、寮に戻った。
早速着替えて夕飯だ。
調理場のおばちゃんとも結構話すようになった。
今は「とおるちゃん」と呼ばれている。
俺は名前を呼んでいる。高野さんだ。
結構楽しそうにやってるんだよね。
俺も弁当屋さんが結構長いから、親しみを感じるんだよ。
「あ、とおるちゃん、お疲れ様~。今日はすごいよ」
「え? なに?」
「ヒレカツだよ。それもチーズ入りと、梅干しと大葉入りの種類があるんだよ~」
「へえ~、すごい! 楽しみ」
うわ~、そんなに手間がかかってるんだ。凝ったんだねえ~。
早速キャベツ山盛りで食べた。
あーもう美味しいよ! 最高だよ。
「高野さん、めちゃくちゃうまいよ~」
「でしょう? えへへへ」
もう満腹だ。大満足だ。
お風呂に行こうっと。
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