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第65話 海斗サイド・国試=酷使
頑張っているとおるのことを思うと、もう必死で頑張るしかなかった。
そして、なんとか医大の卒業試験はパスした。
これでようやく国家試験を受ける資格ができた。
はあ……まだ息が抜けない。
あと少しだ。
卒試ではクラスの十二人くらいが落ちた。
俺はギリギリでも通れたから、本当に良かったと思う。
そんな時、父からメールが来た。
「国試に合格したら、結婚祝いにマンションをプレゼントする」
はあ?
気が早すぎるだろ。
しかも、病院から徒歩五分。
最上階の四LDK。
駐車場も二台確保したらしい。
さらに、
「早くとおる君に住まわせてやれ」
と書いてあった。
……いや、これ、プレッシャーじゃないか?
笑えるけど、笑えない。
落ちたらどうするんだよ。
でも、喜ばせっちゃってさ。知らないぞ。
ただ、とおるが泣いて喜ぶのは間違いない。
もし俺が落ちたら……とおるだけでも住んでもらおうか?
そんなことを考えると、また情けなくなってくる。
しょうがない。
ここまで来たら、もっと頑張るしかない。
とおる、待ってろよ。
***
三月になった。
十六日が国試の合格発表の日だ。
どうなるんだろう。
やれるだけはやった。
あとは祈るしかない。
結果が出るまで、俺はひたすら引っ越しの準備をした。
トラックは十九日に予約してある。
この時期は引っ越しが混むから、予約しないと四月にずれ込む。
だから仕方なかった。
落ちたらキャンセルすればいい。
そして、こっそりマンションを見に行った。
……笑うしかなかった。
ピカピカすぎる。
中古を買ってフルリフォームしたらしい。
壁紙も水回りも新品。
キッチンは最新のシステムキッチン。
最高だ。
少し丘の上に建っているから、夜景が素晴らしく綺麗だった。
父が張り切って選んだのがよく分かる。
うれしい。
カーテンも新しく付けてくれていた。
そして――
メインの寝室には、真新しいクイーンサイズのベッド。
ベッド用品まで全部そろっている。
枕元にはメモが置いてあった。
〈結婚祝い〉
……もう、落ちるなんて考えられない。
これを見たら、絶対に受かるしかない。
早くとおるをここに連れてきたい。
一緒に寝たい。
この部屋で、二人で新しい生活を始めたい。
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