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第66話 海斗サイド・花開く
今日が合格発表の日だ。
なんだか足ががくがくする。
もし駄目なら、また一年やり直しだ。
正直、その一年を乗り切る自信がない。
パソコンを開いたまま、目を閉じた。
「眠ってもいい」と自分に言い聞かせてるのに、
心臓がドキドキして、頭はどんより重い。
どうするんだよ、俺。
とおるとの日々を順番に思い出していた。
あいつは待っている。
落ちたらどうしよう……。
これで駄目なら、お手上げだ。
俺にはもう、これ以上できない。
とおるの顔を思い浮かべながら、
「精一杯やった」と自分に言い聞かせた。
そして、いよいよ発表の時間が来た。
ああ……一分過ぎた。
見れない__怖い。
頭の中が真っ白になった。
震える指で、自分の番号を入力した。
……出た‥‥‥え、え、え?
間違いないか?
番号を打ち間違えていないか、何度も検索し直した。
いや、間違っていない。
俺、合格したんだ!
手をぎゅと握りしめた。
「ああ……やった!俺はやったんだ」
身体中の力が抜けた......。
胸の奥で、ひとつの言葉が浮かんだ。
ー花開くー
そのまま寝転がって、目を閉じた。
とおる、待たせたな。
愛してる。
涙が滲んで止まらない。
とおるに無性に会いたくてたまらない。
会いに行こうか。
いや、待て。
先に登録を済ませないと。
高額な印紙も準備してある。
登録は明日からだ。
父さんに電話した。
すぐに出た。
「父さん、マンションありがとう。俺、住めるよ」
父さんは笑っていた。
「そうか、よかったな。頑張ったな!おめでとう!」
「ありがとう。俺、明日とおるに会いに行ってもいいかな?」
「登録してからならいいぞ。待ってる」
どうしても、とおるに会いたかった。
これ以上は待てなかった。
やることは山ほどあるのに、心がもう追いつかない。
*
翌日、医師免許の登録を済ませた。
その足で病院へ向かった。
まず院長室に行って、登録証明書を見せよう。
ドアをノックした。
「どうぞ」
開けると、父がいた。
「父さん、お待たせしました。本当に長い間ありがとうございました」
証明書を渡して、深く頭を下げた。
「海斗、本当によく頑張ったな。今、とおる君を呼んであげるよ」
父さんは電話をかけた。
すぐにドアがノックされ、とおるが入ってきた。
俺を見るなり、
「あ……」
と声にならない声を漏らした。
もう我慢できなかった。
父さんがいるのに、そばへ行って抱きしめた。
ぎゅっと、ぎゅっと抱きしめた。
涙が止まらない。
嗚咽が漏れてしまう。
とおるも同じだった。
「とおる。待たせてごめんな。もう待たなくていい。迎えに来たよ」
それをこの三年間ずっと言いたかった。
「海斗、おめでとう。頑張ったんだね」
「うん。死ぬほど頑張ったよ。とおるを待たせてると思うと、焦って仕方なかった」
とおるはふふっと笑いながら、うんうんと頷いた。
「海斗、もうこれ以上待つ必要ないよ。一緒になればいいじゃないか」
父さんが優しく言った。
「とおる、俺たちすぐ結婚しよう。俺はもう待てない」
「うん、いいよ」
「じゃあ今日付で婚約を社内報で発表しよう。
そうしないと院内を堂々と歩けないだろ? いいかな?」
「はい、父さん。お願いします。
俺たち、整い次第すぐに結婚したいです。よろしいでしょうか?」
「ああ、いいさ。十分待った。これ以上は必要ない。」
またとおるを抱きしめた。
「とおる、引っ越しが済んだら、とおるのご両親に挨拶に行くよ」
「うん。じゃあ親にメールしておくね」
「父さん、とおるをマンションに連れて行きたいんだけど、いいかな?」
「ああ、いいさ。行っておいで。
とおる君も今日はもう上がっていいよ。
そうだ、二人とも引っ越しをするだろう?
とおる君も今月いっぱいは休んでいいよ。
結婚休暇にしておくからね」
「はい、本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします」
とおるは深く頭を下げた。
そして俺はとおるの手をつなぎ、部屋を後にした。
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