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第67話 新居のマンション

 海斗が迎えに来てくれた。 それは、俺がこの三年間ずっと夢に見ていたことだった。 院長室に呼ばれて入ると、海斗がそこにいた。 会いたくて、会いたくて……。 言葉にならないほど会いたかった海斗が、目の前にいる。 何も言えないまま、海斗がぎゅっと抱きしめてくれた。 もう……無理だった。 二人で泣きながら抱き合った。 泣けば泣くほど、今までの苦しかったことが一気にこみ上げてきて、 涙も嗚咽も止まらなかった。 お父さんが見ているのに恥ずかしいけれど、 今だけは許してほしい。 そして海斗が「すぐ結婚しよう」と言ってくれた。 俺はずっとそれを待っていたから、本当にうれしかった。 両親にも会いに行くと言ってくれた。 早く知らせなきゃ……きっと驚くだろうな。 海斗が新居のマンションを見に行くと言うので俺も一緒に行った。 お父さんが今日の社内報で、婚約をみんなに知らせてくれるらしい。 すごくうれしい。 これで遠慮しないで一緒に歩けるんだ。 正直、どうしようって思っていた。 俺、隠したり嘘をつくのが苦手だし、 海斗がどこでもモテまくるのは知っているから、 この病院の中でどんな顔をしていればいいのか分からなかった。 おまけに三月いっぱいは結婚休暇をくれるんだって。 もうお父さん最高。うれしすぎる。 二人で病院の玄関を出た。 「とおる、父さんが俺たちのためにマンションを用意してくれたんだよ」 「え? そうなの? うわ~ありがたいねえ」 「うん。駅の反対の住宅地の方だから、駅から徒歩5分だよ」 「へえ~そうなんだ。じゃあ近くていいね!」 「だろ? ほら、あの並木道の坂を上っていく途中にあるんだよ」 「わ~楽しみだよ。でも……なんかこの辺、高そうだね? 高級なとこばっかりな気がする。大丈夫なのかなあ?」 「全然平気。多分、病院の法人名義だと思う。 社宅扱いだから一銭も払わなくていいと思うよ」 「……えー、そんなことがあるの? まるで別世界の話だよね?」 むふふふ、と海斗が笑った。 海斗がずっと手を握ってくれて、 美しい桜の並木道の坂を二人で歩いて上った。 「ああ~もうすぐ桜が咲くんだね」 「うん。マンションから見る桜並木は、きっときれいだと思うよ」 そして着いた。駅からも結構近い。 そこは八階建ての、高級感のある立派なマンションだった。 「素敵だねえ~」 「うん、俺も思った。父さん、気合い入れて探してくれたんだと思う」 最上階に上った。 「この最上階は四軒しかないんだよ」 「へえ~そうなんだ」 一階には管理人さんがいたので、二人で挨拶をした。 そしてホテルのような内廊下を進み、 立派な玄関ドアの前に着いた。 「さあ、着いたよ。どうぞ」 海斗がドアを開けてくれた瞬間、驚いた。 明るくて、玄関が広い。 俺、ここで寝られる!(笑) リビングに繋がるドアは半分くらいガラスになっていて、光が入って明るかった。 「ここ、どれくらいの広さがあるの?」 「多分、百平米は越してると思うよ。4LDKだから」 ……言葉が出なかった。 唖然とした。 「どした?」 海斗が笑いながら聞いた。 「だって、そんな広いところに住んだことないから……、 何て言っていいか分かんなかった」 部屋はリビングの窓が大きくて、外の景色が美しすぎる。 「俺がこんなところに来ていいのかな……」 「はは、じゃあ案内するね」 「ここがリビングだろ? 向こうがダイニング。行こう」 手を引かれた。 「海斗、やたらと広いよね? このリビングだって二部屋分はあるよ。 ダイニングも大きいし……どうしよう?」 ふふふ、と海斗が笑った。 「とおるの掃除が大変だね。無理ならメイドサービス頼んでもいいよ」 ブルブルと首を横に振った。

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