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第73話 入籍
昨日、無事に実家へ行って挨拶を済ませることができた。
ホッとした。
今日は月曜日。役所に結婚届を出す日だ。
書類はもう海斗が全部用意してくれている。
保証人は菅野部長と、お父さんにお願いした。
「とおる、支度できたか? このあと病院にも届け出を出さないといけないからさ」
「うん、わかってる。もうできたよ」
二人で車に乗って役所へ向かった。
車だと15分くらい。
市役所に入ると、案の定みんなが海斗をぽーっと見つめていた。
ああ~、やっぱりね。
どこに行っても同じだ。
そして最後に俺の顔を見るんだよね。
“あれ?”って。
あれを見るのが本当に嫌なんだよ。
だから海斗と少し離れて歩きたいんだけど、海斗がそれを許さない。
必ず俺の手をつないでくる。
うれしいけど……人目が苦手になる。
そんなこんなで、無事に入籍を済ませた。
その足で病院へ向かい、まず院長室へ挨拶に行った。
「お父さん、ようやく入籍しました。ありがとうございました」
お父さんは海斗をやさしく見つめて微笑んだ。
「ようやくだな。おめでとう。とおる君も、本当におめでとう」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
きちんと挨拶ができて、ほっとした。
「お父さん、マンションが凄すぎてまだ慣れません。
なんかもったいなくて……本当に申し訳ないです。
あんな素晴らしいマンションを、ありがとうございました」
「いいんだよ。好きなように使いなさい」
くすくす笑っていた。
「はい、感謝します」
本当にやさしい人だ。
「海斗、あと菅野部長にもご挨拶したいんだけど、行ってもいいかな?」
「ああ、そうだね。一緒に行こう」
「じゃあ、お父さん、また来ます。
あ、良かったら食事にいらっしゃいませんか? 友梨奈ちゃんも一緒に」
「フフフ、そうだね。友梨奈が喜びそうだ。伺うよ、ありがとう」
その後、人事と総務のある事務所にも顔を出した。
入った瞬間、
「ええーー??」
と大きな声が上がった。
俺も海斗もびっくりして顔を見合わせた。
菅野部長が「ご結婚おめでとう」と言ってくださった。
「ありがとうございます。お休みをいただいてすみません。助かります」
他の人たちは特に用事はなかったみたいだけど、
“えーー?”の理由は……まあ、海斗だろう。
「海斗、行こうか?」
「では失礼します」
事務所を出ると、海斗がニヤッとした。
「俺、モテるからさあ。しょうがないよねえ~」
「ふ~ん、そうなんだ」
無視した。
「とおる、買い物に行くぞ」
「またあ? もう要らないよ。この前いっぱい買ったでしょう?」
「ダーメ。とおるのスーツケースを買うんだから」
「なんで?」
「俺たち、あさってから新婚旅行に行くんだよ」
「ふ~ん」
冗談だと思って無視していた。
「海斗、帰ろうよ」
「ダーメ。ほら行くぞ」
腕をガシッと掴まれて引っ張られた。
海斗は本当に力が強い。
そして百貨店へ。
近いから、海斗が行きたがるんだよ。
結局カバン売り場に連れていかれて、スーツケースを買うことになった。
「海斗、帰ろうよ」
「とおる、お揃いのパジャマ買おうか?」
「えー?」
こっそり小声で言った。
「裸が好きなくせに」
ニターッと笑った。怖い。
結局買った。
なんか肌触りの良い高いやつ。
もう知らない。
金銭感覚が狂う。
いかんいかん、気を付けないと。
帰宅して、知らん顔で夕飯の支度をした。
今夜はハンバーグ。
和風ソースに大根おろし。
付け合わせは冷凍のインゲンとトウモロコシ。
サラダとコンソメスープ。
海斗は何してるんだろう?
気になって寝室を覗くと、スーツケースにいろんなものを詰め込んでいた。
「何してるの? どっかに行くの?」
「だから新婚旅行に行くって言ったでしょう?」
「……は? ウソでしょう?」
「俺がウソ言ったことあるか?」
「……そうだったね」
そっと後ろから抱きついた。
「ありがとうね。冗談だと思ってた」
くるりと回って抱きしめられた。
「新婚旅行には行かないと駄目でしょう?
俺たち、ハダカが好きなんだから!」
「バカバカ!」って胸を叩いた。
「それは海斗でしょう?」
「はい、そうです」
へへへって笑ってた。
もう~恥ずかしい。
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