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第74話 おまじない

 翌日。 今日は海斗のお母さんのお墓参りに行く。 本当は入籍した日に行きたかったんだけど、行けなかった。 海斗は中学生の時にお母さんを病気で亡くしている。 友梨奈ちゃん、寂しかっただろうな。 お墓は病院から車で30分ほどのお寺にあるらしい。 今日は初めて行くから、お花とお線香、花切りばさみを用意して向かった。 外のお墓じゃなくて、納骨堂の中に仏壇がずらっと並んでいるタイプだった。 そこでお供えのお菓子とお花を供えて、手を合わせた。 海斗が静かに言った。 「お母さん、俺、とおると結婚しました。幸せになります」 その声があまりに素直で、胸がじんわりした。 「私も……初めまして、とおるです。海斗と幸せになります。よろしくお願いします」 ようやく、ちゃんとご挨拶ができた。 あれ?……仏さんってお願いごとをしていいのかな? もししていいなら、お願いしたいことがあった。 明日、二人で飛行機に乗るんだよね。 ペンダントはしてるけど……大丈夫かなあ。 俺がペンダントの石を触っていたら、海斗が気づいた。 「どうした? なんか心配なのか?」 「うん……やっぱり飛行機がちょっと怖いんだよね。二人一緒だからさ」 「おばさんを呼んでみようか?」 「そうだね。最近来ないもんね。どこで何してるんだろう?」 ふ、やっぱり海斗もおばさんが気になってるんだ。 こうなったらおばさんも親戚だよ。 「海斗、早く帰ろう。おばさん呼んでみよう」 まっすぐ帰宅して、二人で声をそろえて呼んだ。 「おばさーん、出てきてよー!」 何回も呼んだのに、出てこなかった。 どこをほっつき歩いてるんだよ……。 「海斗、お父さんに電話して聞いてくれない? 大丈夫かどうか」 「そうだね、電話するよ」 海斗が電話をかけた。 「あ、父さん。あのね、俺たち新婚旅行で沖縄に行くんだけど、二人で飛行機に乗っても大丈夫かなあ? ……うん、うん……わかった。ありがとう」 「何だって?」 「今は大丈夫なんだって」 「今は?」 「うん。そうとしか言わないからさ。しょうがないよ」 「……わかったよ」 「明日早いんでしょう?」 「うん。8時半の飛行機だから、6時に出ないと駄目だね」 「じゃあ5時起き?」 「うん。もう寝よう。支度はできてるから大丈夫だよ」 「わかった。寝よう。あとは海斗が俺を寝かせてくれれば問題ないよ」 そこ大事。 「なんか言った?」 ふふふ。急に抱きしめられた。 「もういいから寝るよ。海斗、俺、飛行機に乗ったことないからよろしくね」 「だからさ。おまじないしてあげるよ」 「いや、それは遠慮しておくよ。お休み」 * 翌朝、アラームで5時に起きた。 もう超大急ぎ。 ベッドを整える。 サーッと顔を洗ったら、ポタージュだけ飲む。 着替えて整えたら、夕べ支度しておいたからそのまま出かけられる。 「海斗、電気つけっぱなしはないよね?」 「ああ~心配するな。どこもつけてないから、行くぞ」 今日は羽田空港へは車で行く。 空港の駐車場も予約してあるんだって。 ふ~ん。相変わらず回転がいいねえ。 そして、なんと途中でコンビニに寄った。 「なんで?」 「空港は広いんだよ。ちょっと小腹を満たすのも結構歩くんだよね」 「ふ~ん、そうなんだ。ウロチョロするのが楽しいと思うんだけど……」 今日は時間がないんだって。 じゃあ、しょうがないか。 そして、ワクワクドキドキの搭乗口。 行くぜー!

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