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第76話 エロっぽいバスタブ

ランチが美味しすぎた上に、デザートが魅力的すぎて抗えなかった。 そのせいで食べ過ぎたみたい。 移動するのはちょっと待ってほしい。 「とおる、食べ過ぎたんじゃないの? 少し部屋で休もうか?」 「うん、そうする」 「じゃ、チェックインしてくるから待ってて」 「うん、待ってる」 5分ほどで戻って来た。 「ほら、チェックインしてきたから、部屋に行くぞ」 海斗が手を繋いでくれた。 えー? ちょっと恥ずかしいよ。 だってスタッフの人が“居すぎ!”ってくらいに多くて見てるんだもん。 そして豪華でふかふかの通路を通って、部屋のドアに着いた。 「ほら、とおるのための部屋だよ」 さっとドアを開けてくれた。 え……言葉が出なかった。 この世界は天国としか思えなかった。 なんて美しい家具たち。 そして奥のバルコニーには白い長椅子やテーブルまであった。 何よりも、海の景色が一面に広がっていた。 そして……え? ベッドの足元にバスタブ?? 「海斗、大変見て! 身体を洗うところがないよ。 なんでベッドの足元にバスタブがあるの?? それに全部ガラス窓だから丸見えじゃん!」 海斗がニヤリとしていた。 「んもう~、分からない?」 耳元でささやいた。 「あれはね、セックスのあとで身体をほぐすためのバスタブ」 ……いきなり赤面して心臓がどきどきした。 なんか、もう恥ずかしくて見れない。 そーっと俯いたままリビングに行った。 そしたら海斗が後ろから抱きしめた。 「こら、逃げるな。あとのお・た・の・し・み」 耳元がくすぐったかった。 ついでに耳にキスをいっぱいされた。 海斗は余裕のくすくす笑い。 はあ~息苦しい。 「大丈夫だよ。ほら、こっちに来てごらん」 と手を引かれて洗面所に連れて来られた。 洗面台が2台もある。 しかも茶色の大理石で囲まれた洗面台なんて初めて見た。 おまけにその下には、てんこ盛りの真っ白なバスタオルたち。 ここに来る人は何回お風呂に入るの? って思った。 そして海斗がその横のガラス戸を開けると、そこがシャワールームになっていた。 シャンプーやリンス、ボディーソープ類が置いてあった。 「ここで身体を洗って、そこの白いバスタブに入るんだよ」 「……じゃあ、さっきのはやっぱり……」 「フフフ。だから、あれは“お楽しみ”のバスタブ」 もう……海斗はいやらしいんだから。 どんだけ俺と一緒にしたいの? 俺だって海斗に抱きしめられるのはうれしいんだけど、 でもこれだけ揃ってると恥ずかしいよ。 「おいで」 また手を引かれてソファに座った。 そして俺を膝の上に向かい合わせに座らせて、抱きしめた。 「こういう部屋は嫌だった?」 ブルブルと首を横に振った。 「海斗、こんなに豪華な部屋を本当にありがとう。 ただ俺は初めてだから、ちょっとびっくりしただけ……」 海斗がふっと笑った。 「いいんだよ。それが普通だよ。 いつもこういう所に泊まる人なんて、そうそういないよ。安心して」 「うん。海斗はいつもこういう所なの?」 「違うよ。ここほどじゃない。良いホテルには泊まるけど、普通のツインルームだよ」 「そうなの?」 「うん。俺たちは今日、新婚旅行に来てるんだよ。思いっきり楽しもうよ」 「うん、わかった。ありがとうね」 海斗がじっと見つめた。 「俺たち、幸せになろうな。今まで長い間待ったんだからさ。俺がどれだけ泣いたと思ってるんだよ」 「……ほんと? ……海斗も?」 泣いたのは俺だけだと思ってた。 「そうさ。よくも何回も泣かせてくれたな」 「ええと……あれ、階段から落ちた時?」 「あれが最大級だよ。俺だってマジで死にそうな気分だったんだからな」 「え、まだ……他にあったの?」 「医務室にだって運ばれただろ?」 「あ、そうだった。だってあれは急に海斗が現れたからだもん」 「俺のせいだったの?」 「うん。だってびっくりしちゃった。ずっと会いたかったから……」 海斗が眉を寄せて見つめる。 なんか申し訳なくて俯いちゃった。 「もう~なんでとおるは倒れるかなあ。心配するだろう?」 海斗がぎゅっときつく抱きしめた。 「それに、なんだよあのボロボロの手は? なんでクリームでも付けないんだよ」 「だってさ、そんな暇なかったもん。 働いてお金を貯めないと免許が取れないんだもん。しょうがないよ」 「あれだって、俺は十分に泣かされたよ。とおるを守れなかったことが辛かった」 ふいに海斗も俺も涙があふれた。 あとは縋って泣いた。 海斗は守る責任を感じてたんだ。 知らなかった……。 そういう悲しさってあったんだね。 「ごめんね、心配かけて。でも俺は精一杯頑張ったよ」 「うんうん、分かってる。分かってるよ。頑張り過ぎだよ。ごめんな。俺のために……」 海斗だって泣いていた。 もう二人でひしと抱き合ってた。 ひとしきり二人で泣いていたけど、海斗が振り切るように言った。 「よし。もう泣くのはやめよう。二人で新婚旅行に来たんだからさ、遊ぼう」 「うん。遊んでいいんだね。うれしいよ。こんな日が来るなんて」 「とおる、愛してるよ」 「うん。俺も海斗を愛してる」 それから濃厚なキスをされた。 俺も‥‥‥つい乗っちゃった。

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