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第79話 天国へ続く橋

 2泊目を素敵なスイートルームで過ごし、チェックアウトした。 今日はまた素敵なところに行くんだって。 そして車で出発。 「とおる、今日は古宇利大橋に行くぞ」 「うん……楽しみ」 「橋までは40分くらいだな」 「そんなに近いんだ」 「うん。海沿いを走るから気持ちいいぞ」 車が動き出すと、窓の外に青い海が広がった。 朝の光でキラキラしていて、 まるで絵の具を薄く溶かしたみたいな色だった。 「海斗、見て……すごい」 「沖縄の海は、朝が一番きれいなんだよ」 道はゆるやかにカーブして、海がどんどん近くなる。 そして本当に40分も走ると見えてきた。 「とおる、あれ見えるか? 古宇利大橋だ」 「え……あれが……?」 遠くに、海の上にまっすぐ伸びる白い橋が見えた その向こうに古宇利島がぽつんと浮かんでいる。 「……きれい……」 思わず声が漏れた。 橋に入った瞬間、左右の海が一気に開けた。 「うわ~すごいねえ~、美しすぎるよ」 ターコイズブルーや濃い青の濃淡が重なっていて、 見渡す限りとても美しかった。 「ねえ、海斗、これって天国へ行く道じゃない?」 「ふっ、頼む、まだ殺さないでくれ」 もう~海斗がヘラヘラ笑っていた。 俺も自分で言ったのにおかしくなって笑った。 橋の真ん中あたりで、海斗が少しスピードを落とした。 「とおる、よく見ておけよ」 「うん……」 胸がいっぱいになって、言葉が出なかった。 橋を渡りきると、小さな島の静かな空気が広がっていた。 海斗が車を停めて、二人で浜辺に降りた。 「ほら、まだ天国じゃないぞ」 「シー」 回りをキョロキョロした。 誰も聞いてなかっただろうな? それでも砂は白くて、海は透明で、 足首まで入るとひんやりして気持ちよかった。 「海斗、ああ~ここ……天国みたい」 「わかったよ、はいはい、ここは天国です」 ふふふと二人で笑った。 海斗が俺の手をそっと握ってくれた。 しばらく二人で海を眺めていた。 波の音だけが聞こえて、時間がゆっくり流れていく。 「帰りたくないな……」 ぽつりと言うと、海斗が肩を抱いてくれた。 「帰らなくていいなら、ずっとここにいたいけどな」 「……うん」 胸がじんわり熱くなった。 この島にはカフェがいっぱいあるんだって。 その中でスナックやクレープのお店があった。 俺はクレープのバターシュガーが好きなんだよね。 海斗はホットドッグにした。 あとは二人ともアイスティー。 浜辺に持って行って、ゆっくり食べた。 実はホテルの朝食を食べ過ぎたんだよね。 エへへへ。 食べ終わったら出発した。 また素敵な橋を渡ったけど平気。 まだ旅は続く。 そのまま那覇市内へ向かった。 「ここからは90分くらいだな」 「けっこう遠いんだね」 「沖縄は縦に長いからな。寝ててもいいぞ」 車は高速に入り、海が遠ざかっていく。 窓の外には、緑の山と赤瓦の家が続いていた。 沖縄の景色はどこか懐かしくて、胸が落ち着く。 「海斗、今日もありがとう」 「ん?」 「なんか……全部、幸せすぎて……」 「とおるがそう言ってくれたら、それで十分だよ」 海斗の声が低くて優しくて、 そのまま眠りに落ちてしまった。 「着いたら起こすから、寝てろ」 「うん、ありがと」 こういう時の海斗が一番好き。 そして那覇のホテルに着いた。 海斗がチェックインを済ませて部屋に荷物を置いた。 「ねえ、お土産を買おうよ」 「そうだな、下の売店に行こうか」 エレベーターを降りると、 ホテルの売店は明るくて、沖縄らしい色があふれていた。 「父さんに何か買っていくか」と海斗。 「うん……かりゆしシャツとかどうかな?」 海斗が白地にブルーの柄のシャツを手に取った。 爽やかで、南国らしくて、 お父さんに似合いそうだった。 「これ、父さん好きそうだな」 「うん、絶対似合うよ」 「まだ待ってて、他にも買うから」 「ねえ、これ友梨奈ちゃんにいいんじゃない?」 琉球ガラスの小さなヘアゴムを見つけた。 色が綺麗だし、制服にも私服にも合う。 あとは沖縄限定のハンドクリーム(シークヮーサーの香り)。 それと琉球柄のミニタオル。 よし、決定! 「ねえ、菅野部長にもなんか買っていきたい」 「琉球ガラスのタンブラーはどうかな?」 「あ、海斗、ナイス」 手に取ると、各色あってすごくきれいだった。 「ねえ、うち用にも買っていい? なんか思い出に欲しい」 「ああ、店ごと買え」 もう~ぷーっと笑った。 そして各色のタンブラーを6個買った。 「2個は割れた時用ね」 海斗が呆れてた。 「割れる確定だな」 「だな」 そして夕食は外に出て、沖縄料理の店に行った。 アグー豚のしゃぶしゃぶと沖縄そば。 沖縄そばは、海斗と半分こにして食べた。 めっちゃ美味しかったわ。 ああ~沖縄の最後の夜が過ぎていく。 また海斗の腕の中で眠りについた。 * 翌朝、無事に飛行機で羽田に帰って来た。 行きがけは、ここでブラブラしたかったはずなのに、 帰ってきたらどうでもよくなっていた。 海斗にそう言ったら吹き出してた。 自分でもおもしろい。 笑える。

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