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番外編2・バニラビーンズ
その日は珍しく海斗が、
早めに仕事を終えて俺の事務室に来た。
まあ土曜日だから、13時には終わるはずなんだけど、今は15時。
それでもきっと頑張ったんだよね。
「ほれ、どうだ? 久しぶりに早く終わっただろう?
何のためだと思う?」
早速きつく抱きしめられてキスをしてくる。
もう知らないよ~。
必死で海斗を剥がして、あとの予定を言った。
「明日は日曜日だから、帰りにスーパーで買い物をいっぱいするよ」と俺。
「おー、いいよ。車にどんどん乗せてくれ」と海斗。
マンションから駅の反対側の病院まで歩いても10分もかからない。
その距離を海斗は車で通勤している。
もったいない……。
契約している駐車場代が勿体ないからだって。
ふ~ん。
早速車でスーパーに行った。
海斗が大きなカートを引いてくれる。
俺はポンポン買いたいものを放り込むだけ。
「あ、海斗さ、ここから車で5分くらいのところに、
フランス料理屋さんがあるんだって。
すごくきれいでパンも美味しいんだってよ。行きたい!」
「うん、いいよ。買い物を家で片付けたら行こうか?」
「はーい!うれしい」
シメシメ。
これで今夜はご飯を作らないで、体力を温存できるぞ。
帰宅して食料品を片付けると、二人で着替えた。
海斗も俺もちょっとおしゃれして、ジャケットを着用。
そしてフランスの国旗が表に掲げられたレストランに着いた。
薄い黄色の壁で、テーブルや椅子が白。
ところどころにブルーのアクセント。
すごく素敵な雰囲気だった。
真っ先に持ち帰り用のパンをたくさん注文した。
これは病院の受付の人に教えてもらった。
フランスからの空輸で取り寄せていて、冷凍で届くんだって。
解凍したらトースターで焼くだけ。
おまけに高級なフランス製のバターがあって、
それも試しに1個お願いした。
小さいからいいかな。
メチャメチャ贅沢が身に付いてしまった俺……。
でも楽しみ~。
明日はチキンのトマトシチューを作るから、
お義父さんや友梨奈ちゃんを呼ぶつもり。
そしてレストランではコース料理を海斗が頼んでくれた。
ワインも海斗の好み。
俺はすぐ酔うからノンアルをお願いした。
「前菜から始まって......、え、何この美味しさ?
コンソメにジュレがかかってる。
透明感のある野菜のテリーヌ。
味がフレッシュで爽やかだったらない。
俺はまだこれは作ったことがない。
だって手間がかかるもんね。
でも明日作ろうかな?」
「ねえ、海斗、この野菜のテリーヌすごく美味しいよね?。
明日お義父さんたちを呼んだら、これを作ってあげようかなあ」
「う~ん、どうかなあ~、そんな体力が残ってるかどうか? だよね」
そして俺にウインクをした。
もう==恥ずかしい!
今の誰か見てなかったかな?
きょろきょろと周りを見回した。
「もう、海斗ったら!」小さな声で抗議した。
微笑みながら済ましていた。反省ゼロ。
メインの牛肉の赤ワイン煮もデザートもすごく美味しかった。
特にデザートのクレームブリュレは濃厚で、
バニラビーンズの香りが最高だった。
これは友梨奈ちゃんに食べさせてあげたい。
俺はまだ本物のバニラビーンズを使ったことがない。
そろそろやってみてもいいかなあ?
また贅沢になっちゃうな。
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