83 / 90

番外編2・バニラビーンズ

 その日は珍しく海斗が、 早めに仕事を終えて俺の事務室に来た。 まあ土曜日だから、13時には終わるはずなんだけど、今は15時。 それでもきっと頑張ったんだよね。 「ほれ、どうだ? 久しぶりに早く終わっただろう? 何のためだと思う?」 早速きつく抱きしめられてキスをしてくる。 もう知らないよ~。 必死で海斗を剥がして、あとの予定を言った。 「明日は日曜日だから、帰りにスーパーで買い物をいっぱいするよ」と俺。 「おー、いいよ。車にどんどん乗せてくれ」と海斗。 マンションから駅の反対側の病院まで歩いても10分もかからない。 その距離を海斗は車で通勤している。 もったいない……。 契約している駐車場代が勿体ないからだって。 ふ~ん。 早速車でスーパーに行った。 海斗が大きなカートを引いてくれる。 俺はポンポン買いたいものを放り込むだけ。  「あ、海斗さ、ここから車で5分くらいのところに、 フランス料理屋さんがあるんだって。 すごくきれいでパンも美味しいんだってよ。行きたい!」 「うん、いいよ。買い物を家で片付けたら行こうか?」 「はーい!うれしい」 シメシメ。 これで今夜はご飯を作らないで、体力を温存できるぞ。 帰宅して食料品を片付けると、二人で着替えた。 海斗も俺もちょっとおしゃれして、ジャケットを着用。 そしてフランスの国旗が表に掲げられたレストランに着いた。 薄い黄色の壁で、テーブルや椅子が白。 ところどころにブルーのアクセント。 すごく素敵な雰囲気だった。 真っ先に持ち帰り用のパンをたくさん注文した。 これは病院の受付の人に教えてもらった。 フランスからの空輸で取り寄せていて、冷凍で届くんだって。 解凍したらトースターで焼くだけ。 おまけに高級なフランス製のバターがあって、 それも試しに1個お願いした。 小さいからいいかな。 メチャメチャ贅沢が身に付いてしまった俺……。 でも楽しみ~。 明日はチキンのトマトシチューを作るから、 お義父さんや友梨奈ちゃんを呼ぶつもり。 そしてレストランではコース料理を海斗が頼んでくれた。 ワインも海斗の好み。 俺はすぐ酔うからノンアルをお願いした。 「前菜から始まって......、え、何この美味しさ? コンソメにジュレがかかってる。 透明感のある野菜のテリーヌ。 味がフレッシュで爽やかだったらない。 俺はまだこれは作ったことがない。 だって手間がかかるもんね。 でも明日作ろうかな?」 「ねえ、海斗、この野菜のテリーヌすごく美味しいよね?。 明日お義父さんたちを呼んだら、これを作ってあげようかなあ」 「う~ん、どうかなあ~、そんな体力が残ってるかどうか? だよね」 そして俺にウインクをした。 もう==恥ずかしい! 今の誰か見てなかったかな? きょろきょろと周りを見回した。 「もう、海斗ったら!」小さな声で抗議した。 微笑みながら済ましていた。反省ゼロ。 メインの牛肉の赤ワイン煮もデザートもすごく美味しかった。 特にデザートのクレームブリュレは濃厚で、 バニラビーンズの香りが最高だった。 これは友梨奈ちゃんに食べさせてあげたい。 俺はまだ本物のバニラビーンズを使ったことがない。 そろそろやってみてもいいかなあ? また贅沢になっちゃうな。

ともだちにシェアしよう!