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番外編7・小玉スイカの乱
そして妊娠8か月になった。
おなかに小玉スイカを、ぽこんと乗せているような感じになった。
なんだかんだとレセプトのチェックが忙しくて、
そろそろ自宅待機にしようかな?と思うと、どさーっと仕事がやって来る。
大きなおなかで病院に来るのが恥ずかしいんだけど、
そこはガバっと大きなパーカーを着てごまかしている。
ズボンはウェストがゆる~いゴムのやつ。
海斗は相変わらず宿直が多くて、家に帰るのは週に3日くらい。
それだと俺一人家にいても、寂しくてしょうがない。
だから結局恥を忍んで病院に来ることになる。
海斗もその方が安心だって言うんだもん。
妊娠が分かった時から昼食は作らなくていいと、
お義父さんが言ってくれて、社食でお弁当に詰めてくれて、
それをお父さんが取りに行ってくれる。
申し訳ないんだけど、3人分ね。
でも仕事が忙しいから、本当に助かる。
もう動くのも億劫なんだもん。
買物は行けないからさ。
海斗が行ける時に買ってきてくれる。
はあ~、なんだか同じ姿勢で座って仕事するのが疲れる。
時々ソファで横になってるんだけど、
海斗がそれを見ると心配する。
なんかいい方法がないかな?
なんて思っていたら、すごいことになった。
ガタガタ音がすると思ったら、
海斗がいきなりドアを目いっぱい開けて、ソファの位置を変え始めた。
「海斗何してるの?」
「すげえ、いいアイデアを思いついたんだよ」
大きな音で、隣のお義父さんまで見に来ちゃった。
「はあ、なるほどね」とお義父さん。
そして家具類を詰めたら、空いたスペースに入院用のベッドを運び入れた。
「ほら、とおる、これさ、上半身も下半身もリモコンで上下出来るんだよ。
だから、ここで横になって仕事をしていいぞ」
「そうなの?悪いね。ありがとうね」
正直めっちゃうれしかった。
食後はマジでお昼寝をしたかったんだよね。
「ほれ、横になってみて」と海斗
「うん。ありがと」
早速横になった。
「高さがあるから落ちるなよ。ベッドに柵を付けておくからさ」と海斗。
「うん、わかった」
おまけにベッドをまたいでくれる専用のテーブルまで持って来てくれた。
これだと本当に入院生活みたいだな。
うれしい。これで安心だ。
これでおなかに負担なく、仕事が出来るようになった。
*
そして妊娠9か月になった。
その日はなぜだか、腰全体が張って変な感じがした。
そのうちに下腹も痛くなってきた。
強い痛みじゃないけど、なんだかきゅーっと絞るような感じ。
どうしよう‥‥‥?
海斗は仕事中だし。
お義父さんに言うと心配するし‥‥‥。
でもしょうがないから海斗にメールを入れておいた。
そして耐えること2時間。
タタターっと走って来る音がした。
「とおる!大丈夫か?」
聴診器で俺のおなかを診ていた。
そして隣のお義父さんを呼んできた。
「どうしたんだ?」
「どうも子宮が収縮しているみたいだけど、まだ早いからなあ」と海斗。
「バース科の先生を呼びなさい」とお義父さん。
そしてバース科の先生が診てくれた。
エコーの機械も引っ張って来て、お腹に当てて見ていた。
「う~ん、まだ9か月だからねえ。
なんとか、あと4週くらいは保たせたいよね。
ただ骨盤が狭いから、それで早く出たがっているのかもしれないね。
あまり大きくならない方が良いとは思っていたけど、
少し点滴治療をして様子をみましょうか?」と先生。
そういうわけで、子宮の収縮を止める薬で様子を見ることになった。
でも薬がすぐ効くわけでもなく、
2日間は痛みに耐えることになった。
「この部屋のままで入院という事にしましょう。
ナースがフォローしますから、当然絶対安静ですよ」とバース科の先生。
ああ......寝たきりになってしまった。
先生と入れ替わりに、
ナースが枕元に絶対安静の札を下げて、点滴をしてくれた。
そしてモニターと酸素ボンベまで持って来た。
仕事は当分無理だ......。
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