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第2話
目が覚めると、そこは白い空間だった。
そして何故か、僕はパンイチだった。
「……は?」
状況が理解できず周囲を見回すと、少し離れた場所に御影くんが寝転がっていた。
御影くんも同じくパンイチで、その傍らにはスーツを着た金髪オールバックの男が立っていた。男は御影くんの胸に手を当て、チェック用紙に何かを書き込んでいる。
――何をしているんだ?
その時、御影くんが目を覚ました。
「あっ?何だてめえは!?医者か!?」
いきなり男に殴りかかろうとする。しかし振り上げた拳は、空中でぴたりと止まった。
「なっ――!?」
「あらぁ!血気盛んな受けねぇ!」
男は嬉しそうに声を上げた。
見た目は完璧な美丈夫なのに、喋り方は完全にオネェだった。
「受け!?」
僕が思わず反応すると、オネェの男はにっこりと微笑んだ。
「あら!攻めの佐々木千隼きゅんじゃなーい!」
「は、はぁ!?何で僕が攻め!?ていうか貴方は!?ここはどこなんですか!?」
混乱していると、御影くんが怒鳴った。
「おい!金髪オネェ野郎!何で俺動けねーんだよ!!」
「きゃあ!暴力はんたーい!!今あたしを殴ろうとしたから止めたのよ!あたしこれでも神様なワケ!BL好きのね!」
――神様?
腐男子ならぬ腐神様だった。
……ちょっと話が合いそうだと思ってしまった自分が怖い。
「あらあら千隼きゅん。でもねぇ、悲しいことに貴方は攻めに転じてもらうわ。この御影詩季くんのね!」
「何の話だ!?いい加減動ける様にしやがれこの金髪オネェ野郎!お前も佐々木もキモいんだよ!!」
御影くんは怒鳴るが、身体は微動だにしない。
「あんた……ちょっと反省しなさいよ。あんたの前世、相当ひどかったわよ?他人から金を巻き上げたり、虐めたり、盗みをしたり……やりたい放題じゃない。見つからずに済んだのが奇跡ね」
「なんだこのストーカー金髪オネェ!?」
「あたしには全部お見通しよ?神様だからね。BL好きの」
さらっととんでもないことを言う。
「親が犯罪者で投獄されていたことや、愛情をもらえなかったことには同情するわ。でも、それを理由に他人を傷つけていいわけじゃないのよ」
御影くんの顔が歪む。
「てめえ!人の家庭のことベラベラ喋ってんじゃねぇよ!!」
怒りに震えているのに、身体は動かない。
BL神様は今度は僕の方を向いた。
「それで千隼きゅん。貴方は御影くんに虐められたり、パシリにされたり、殴られたり……散々だったわね。でも高校でBLに出会って、新しい世界を見つけた」
――全部知っている。
「本屋で再会して、そして二人とも車にはねられて即死」
「ああっ!?やっぱり死んでんのかよ俺!!」
御影くんが叫ぶ。
「つかなんでパンイチなんだよ!!」
「診察していただけよ。人生を確認するためにね」
それでパンイチなのか……。
「あの……僕達はどうなるんですか?」
恐る恐る尋ねる。
BL神様は満面の笑みで言った。
「男しかいない世界に転生してもらうわ!」
「えっ!!?」
一瞬、胸が高鳴った。
男しかいない世界――それは腐男子にとって理想郷では?
「男性妊娠も可能。結婚も可能。そして貴方達は愛し合うの」
一気に血の気が引いた。
「ふざけんな!!」
御影くんが叫ぶ。
「詩季くんは侯爵家の美少年令息に転生。病弱設定付き」
「はぁ!?ふざけんな!!」
「更生のためよ。受けなんだからそれくらいがいいの」
「な、何で僕が攻めなんですか!?」
「王子様に転生してもらうわ。詩季くんの婚約者としてね」
「てめえ!」
「復讐してもいいのよ?」
復讐――。
「僕は傍観者でいいんです!」
「残念。でも決定事項よ」
そして神様は微笑んだ。
「二人が愛し合わなければ、詩季くんは総受けになるだけ」
「は!?」
御影くんの顔が引きつる。
「つまり……俺の尻が狙われるってことかよ……」
「そういうこと」
「ふざけんなあああ!!」
神様は満足そうに頷いた。
「さあ――来世でたっぷり愛し合ってちょうだい」
視界が白く染まる。
そして僕の意識は、ゆっくりと闇に沈んでいった。
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