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第3話 王子と侯爵令息転生
次に目が覚めた時……僕は薄いカーテン付きのベッドの上でぼんやりしていた。目がまだよく見えなくて、視界はぼやけている。周囲の音もはっきりとはわからなかった。
それが数日なのか、数ヶ月なのか――よくわからない時間が過ぎて、ようやく視界も意識もはっきりしてきた。
若いおかっぱ頭の男の子が、僕を上から覗き込んでいた。
「おはようございます、ロドリゲス王子」
と、黒髪のおかっぱ少年――十歳くらいの子が挨拶をした。
「……」
おはよう、と声をかけようとしても、うまく声が出せない。喉が思うように動かなかった。
すると今度は、大人のお兄さんが現れた。黒髪に青い瞳、顎には髭を蓄えている。
「ロドリゲス!起きたか!我が子よ!」
と、髭をジョリジョリと僕の頬に当ててくる。
我が子?え?この髭のお兄さんが僕のお父さん?
ていうか王子?ロドリゲス?
――あ!
そうか!僕は……車に轢かれて死んで、BL神様に会って……ヤンキーの御影詩季くん……そして男だけの世界に転生、御影くんが受けで僕の婚約者で、僕が攻めで……!
ということを一気に思い出した。
しかし、どうやら僕はまだ赤ん坊らしく、思うようにこの父親――王子の父なら王様?――に伝えられない!
「お腹空いた?ロド?」
と、部屋に入ってきたのは線の細い男の人だった。
「メイベル……乳の時間だから出てなさい」
と、おかっぱの少年を追い出して、線の細い優しそうないかにも受けな綺麗なお兄さんが微笑む。
「ふふ、ゼルフったら。別にメイベルにくらい見られたっていいよ」
と言うと、髭のお兄さんが即座に反応する。
「ダメだ!シェルの胸を他の男に見せるわけにはいかん!これは私とロドのものだからな。ロドは期間限定だ」
と、お父さんが嫉妬している。
ということは、この人が僕のお母さん!?
「乳やりなんて大したことないよ」
「シェル……頼むから私を困らせないでおくれ」
と、お父さんはお母さんにキスをする。
くそう!ぼやけてあまりはっきり見えないけど、目の前で行われるBL展開に、僕はありがとうございます!とひたすら感謝した。
それから申し訳ないけど、赤ん坊でもお腹は空くもので、お父さんには悪いけど、お母さんの平らな胸を吸うと、ちゃんと男でも母乳が出て驚く。
お父さんには悪いけど、これは栄養源だから仕方ない。
⸻
それから何日か、数ヶ月か、あるいは数年か――時間の感覚は曖昧だったけど、僕はようやく
「ふぁー!」
とか言えるようになり、ハイハイもできるようになった。赤ん坊でも体力をつけないとね。
たまに寝たふりをして、両親が夜中に横でいやらしいことをたっぷりしているのを見て、ほくそ笑む僕。
くくく……もっとやれ。
腐男子の僕にはご褒美でしかない!
おかっぱの男の子も、目が見えたり耳が聞こえるようになってから、メイベルという名で、どうやら僕の執事らしいとわかった。
メイベルはたまに僕を乳母車に乗せて散歩に出かけるが、その庭の先の東屋に僕を置き、近くにいた庭師のイケメンお兄さん――十六歳くらいの茶髪緑目のラッシュという人と、こっそりイチャイチャしていた。
僕がおもちゃで遊んでいる間に、めっちゃイチャイチャしている。
くくく、もっとやれ。
他にも使用人は沢山いて、僕をお風呂に入れる係の少年ミゲロは、短髪のクリーム色の髪で赤目だった。
お風呂には鏡があり、僕はそこで自分の姿を見るが……案外……ちょっと何というか、つり目だよね。
お父さんのゼルフさんに似ており、黒髪に青い目をしているし、一応顔立ちはまだ愛らしい。赤ちゃんだからよくわからないけど、周りの皆は
「きっと大きくなったら男らしくなられる」
とか囁いていた。
⸻
*
⸻
それからさらに年月が経ち、僕は九歳を迎えた。
誕生日会が開かれて、そこに沢山の貴族の子供達がやってきた。
やっと友達でもできるのかな?同年代の友達と僕は初めて会う。
ちなみに僕は王子教育で、マナーに勉強に剣の鍛錬などを毎日していた。
おかげで、なんだか少し逞しくなった気もする。そんなに筋肉はまだついてないけど、その辺のナヨナヨな男子には負けてないかも。
つり目は相変わらずで、なんか意地悪そうな顔なんだけど、一応顔立ちは整ってる感じ。つり目美少年だな。
順番に子供達がプレゼントを持って挨拶に来る。
僕はなんかぼーっと座ってるだけで、横にはメイベルがいて、品定めするような冷たい目線をしている。
王子に無礼を働く子供を監視するかのように。
メイベルは十九歳になっている。恋人のラッシュとは結婚しているが、仕事を辞めずに僕の執事のままだ。
メイベルは仕事熱心だよな。
まぁ……ラッシュも庭師を辞めてないし、王宮にこいつらイチャイチャ住んでるし、別に困らないんだろう。
メイベルなんて僕の事を弟扱いだから、弟に変な虫がつかないか心配しているのだ。ブラコン。
ちなみに僕の下に弟が三人もいるけどね。
まぁ熱々のお父さんとお母さんだから仕方ない。そりゃ子供も沢山産まれるわ。
七歳のクルトと、五歳のメダルに、三歳になるエイトっていう弟達。
彼等も五歳から王子教育を受ける。エイトは三歳だからまだ小さくて無理。
前世みたいにヤンチャな子供ではなく、全員大人しく王家の子供として品良く育てられている。
これが貴族かと、何となく不自由に感じる。
同年代とゲームとかしてみたいけど、前世オタクで腐男子の僕は、それでも使用人達が陰でイチャイチャしてるのをこっそり見るだけで幸せだよ。
そうしてプレゼントを持って挨拶に来た子に「ありがとう」とか適当に受け答えして……この子とあの子は受け、攻めとか脳内で遊んでいたら――
一人の男の子が現れた。
その子を見た瞬間、僕はビビッと何かを感じた!!
目の前には、天使のような金色のふわふわ髪に、紫水晶のような綺麗な瞳。
薄いピンクがかった唇に、白い肌に、うっすらさす赤い頬。
何この子……。
他の子と違って、なんかめっちゃ綺麗だ!!
間違いなく受けだけど!
相手がその辺の子供には勿体ないくらいの美少年だ!
これは相応しい攻めを探してやらないとダメだろう。
しかし、その子は目を潤ませて胸を掴み、こっちを見た。
ひえ!美少年どうした!?
王子の僕が怖い?つり目だし?
と思ってると、その子は――
「お前……お前えええ……佐々木千隼だろ!?」
と、前世の名前を口に出した。
僕は呆気にとられた。
ま……まさか……この清楚可憐で、ちょっと病弱そうな完璧天使な美少年が――
「……まさか君……御影詩季くん?」
と、お互いに確認し合った。
メイベルが不審に思い
「ロドリゲス王子?この方はお知り合い?いや、初めて会った筈ですよね?」
と聞いてきたからビクッとする。
「あ……メイベル……あ、あのそうだよ!?初めて会った。なんかほら物語に出てくる男の子に似てるからつい!きっと同じ本の登場人物に僕達似てて反応しちゃったのさ!!
あの!この子と少し二人で話したい!!」
と言うとメイベルは
「仕方ないですね。向こうのサンテラスへ。外では見張りをつけます」
と言いガラス張りのサンテラスに連れて行くことにした。
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