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第40話 脅威去り山登り
デビットの活躍によりフェルナンドの脅威は去った。ウィンフィル様から竜の守護を貰った為に周辺国が媚び諂う様にうちの国に贈り物をしてきたりした。戦争などとんでもないと恐れられる様になっていた。
フェルナンドも婚約のことは無かったことにと断りの手紙を寄越した。文字がガタガタしていた。余程ショックを受けたと僕は確信してニヤニヤが止まらない。
そりゃ知らないハゲデブのおじさんに無理矢理後ろを犯されまくったら恐怖で立ち直れないだろう。
ジュリは呆れて
「性格悪くなったなぁお前……俺の前では紳士気取りやがって」
と言うから
「何のこと?ヤンデレ化の力だよぉー」
と言うが近ごろ見抜かれていて
「いや、お前心から楽しんでいるな。ヤベェ奴と婚約しちまってる……今からでも遅くねぇか!?」
と言うから
「やだなあ!ジュリったら!逃がさないよ?」
と抱きしめキスをする。
ぐいと顎を避けられ
「とにかく一件落着だな!フェルナンドに同情する気はねぇが、これでお前を取られる心配も無くなったし良かったわ。……さて、俺は……山登りに専念するぜ!」
と言う。
「あ、登山のこと?」
「そうだ!富士山みたいにでけー山のトリトニン山のテッペン取る!」
と言うからさすが元ヤン!テッペンすきだなぁと思った。でも初心者にはキツくない?
「僕も付き合うよ。ジュリが苦しくなったらおんぶしてあげるよ」
と言うとジュリは首を振る。
「いや……こればかりは頼らねえ。俺の身体も健康になったし、絶対に自分の足で登り切ってみせる!おんぶなんて要らねえよ!」
と断られた。ジュリは何が何でも登るつもりだ。僕はうなづいた。
「わかった。おんぶはしないよ。一緒に登って頂上まで行って朝日を見よう!」
と言うとジュリは嬉しそうに華やかな微笑みを浮かべ久しぶりにドキンとした。ジュリったらなんて可愛い!!
「おう!約束だ!!」
と拳をこちらに向けた。ヤンキーのやるあれか!と僕も拳を作りコツンと合わせた。
*
山登り当日……ジュリはリュックを背負いやる気満々で山に向かった。麓の村に到着するとはしゃいでいた。
村長から説明を受けて天候が変わりやすいから注意と言われる。もちろん護衛達やメイベルやタブラーさんも付いてきて登ることになる。村の小さな宿屋で早めに休んで夜明け前から山に登ることになった。立場が立場だし護衛達も一緒に登るのだ。
ジュリは夕食の後、直ぐに風呂に入り早めにベッドへと入ったので僕も隣に横になる。つい手を出そうとしたら怒られた。
「おい、今日はやめろよ!!明日張り切って登るんだからな!体力温存だ!お前も早く寝ろ!!」
「ふぁい……」
凄いやる気だな。逆に興奮しすぎて眠れないのかと思ったけど普通にグースカ寝た!!僕もジュリの額にキスすると瞼を閉じて眠りに落ちた。
*
翌朝、まだ陽が登らない暗い中、登山用の服に着替えて準備万端で山を登り始めるとジュリは
「前世でもこんな事思いつかなかったぜ!喧嘩の毎日でよ。たまに山登りバラエティ見てこいつら何苦しそうに山なんか登ってんだ?バカかよ!
って思ってんだ。でも……俺その時きっと生きながら死んでたんだ。やる事も夢も思いつかなくて苛々してた。
こっちの世界のお前と会う前の俺もな、たぶん生きながら死んでたようなもんだ。あんまりベッドから歩こうとしなかったし外出たら危険だし」
「今はどう?毎日が楽しいんじゃない?それが生きてるって事だよ。死んでたら楽しくないもんね?他人の人生を羨んだり僻んだりして……それはやってこなかった自分のせいなのに」
と僕が言うとジュリは足を踏み締め
「その通りだ!諦める前に一歩頑張って踏み出せば変わったかもしんねー。
お前とこっちで?会って俺も変わった。お前にはちょっと感謝もしてるよ畜生」
と言うから僕はジワリとした。こんな風にジュリが思ってくれてたなんて!嬉しくて感動した。
「僕も……ジュリと出逢えて良かった。前世は最悪な二人なのに今世ではこんなに愛し合い幸せなんておかしな話だけど……心からジュリが幸せに思ってくれて嬉しいよ!うっ!」
と泣き出すと
「泣くなって!バカ!まだテッペン着いてねえから!!おい、後ろの野郎共も遅れてないか!?」
と振り返ると少し距離をとり皆もなんか泣いていた!!
「ええー……」
とジュリが引いた。
皆は
「うう……ジュリアス様尊い!」
「こんなに元気に山を登られるとは!」
「昔はひ弱でか弱く支えてあげないと何も出来なかったのが嘘の様だ!」
「ロドリゲス様のおかげだ!お似合いだ!早く結婚して欲しい!」
と言っていた。
頂上まで厳しく少し休憩をとりつつもジュリは汗だくで登った。
「はあ、はあっ……やっぱり結構きつい……!」
と足をガクガクさせている。
シャツが透けて護衛達がゴクリと唾を飲むので休憩を取り草むらにジュリを連れて行き、替えの服を着させた。
「なんで俺の服なんか持ってきたんだよ!?」
「こう言う事になると思ってね。汗だくの透けた服に興奮する護衛達が出ると思ってね」
「ちっ!」
と受け取り素早く着替えて山登りを再開した。
「ふう、はあ、はあ……、くそ、きちぃ!
ううっ!まだ全然山頂見えねえ!訓練も頑張ったのにこのザマかよっ!」
「大丈夫ジュリ?やっぱりおんぶしようか?ほら」
と背中を向けると
「要らねえって!!俺は自分の力で登る!!」
と頑固ヤンキーの一面が出てきた。
「わかったよ……でも危ない時は助けるからね」
とまた歩き出す。
たまに足元が悪く滑りそうになった時は僕が踏ん張り支えて助けた。
「うう、すまねえ」
「うん、気を付けてね。ジュリに何かあったら大変だ」
と目を細めて笑うと頬を染めるジュリは可愛い。
「よし!行くぞ!」
と照れ隠しに再開するジュリにクスリとして歩く。ジュリの幸せの為なら僕はなんでもしよう。
そしてとうとう頂上まできてジュリは…
「テッペン取ったどーーー!!」
と叫び、皆も
「うおおおおおおおおおお!!!」
と叫んで拍手した!
「ジュリがリュックからゴソゴソして旗を取り出した。いつの間に!そこには日本語で『制覇』と書かれていた。
「この山は俺が取ったぜククク!」
と笑い、今度は護衛達が
「ジュリアス様!ロドリゲス様!あれを!!」
と太陽がゆっくりと登ってきた!
キラキラと光る周囲……そしてジュリはまるで天から降りてきた天使みたいに金の髪が光って思わず見惚れた。
「凄え……」
ジュリが呟き僕も隣で肩に手を置き一緒に見た。
「うん……とても綺麗だ。まるで宝石みたい」
と言う。ジュリが
「クセェ台詞だな……」
と言いつつも寄りかかり、登り切るまで見上げた。
それから皆で少し朝食を取った。バケットに入れてメイベルが全員のを並べて久しぶりに賑やかな朝食を取る。
サンドイッチだけど。
ジュリや皆が嬉しそうに食べているのを見て僕も嬉しかった。ジュリは
「おい、手が止まってるぞ、仕方ねーなほら」
と僕の口に食べ物を運んでくれた。
メイベルが
「ああ、お熱い!私達は後ろを向いてるのでどうぞイチャイチャと食べさせ合いを!」
と言ってくるが
「いや、何言ってんだ!俺は人前でそんな事しないからな!……てお前も口で食べさせようとすんな!やめろ!」
と立ち上がり逃げ出すジュリとしばらく追いかけ合いっこした。
ふふふ、今夜はたっぷり愛し合おう。
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