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第9話 その肌の温もり

「お前の方こそこういう場所は女と一緒がいいんじゃないか?」 「それはないよ。だいたいこんな所、僕には分不相応だよ」 「結人、女とは付き合ったことあるんだろ?」 「無いわけじゃないけど」 「なんだ、その曖昧な答えは」 「うん、真剣に付き合ったことはないから」 「ぶっちゃけ聞くが、経験はしたのか?」 「なっ、何それ!」 「いいじゃないか、男同士なんだし。女、抱いたことはあるのか?」 「まあ、あるけど……」  大学入学後、ほどなくして年上の女学生と経験した。その後、二人と関係を持った。いずれも年上女性で、相手から誘われての経験だった。そして、どの女性とも長くは続かなかった。 「女は良かったか?」  微妙な顔で否定した。正直、良いとは思わなかった。多分相手の女性たちもそうだったんだろう。つまり、結人はセックスが下手なんだろうと思っているし、性欲もあまりない。  なるほど、経験はしているが、良かったわけじゃないのか、益々好都合だ。俺が、セックスの良さを教えてやる。  二度と女を抱く気にならないように、無論、男は俺だけだ。  結人の唯一無二の男になると、祥吾は心の中で誓う。  食事が終わり、二人はソファーへと移動する。 「あーっ美味しかった。デザートまで食べたからお腹一杯だよ」 「ああ、さすがに料理の格も違って美味かったな」  一流ホテルだけあって、料理そしてワインも一流の味だった。  ソファーで隣に座り、結人の肩を抱き寄せると、素直に頭を祥吾の肩に預けてくる。ワインの酔いが心地よく効いているのだろう。  酒が入ると結人は、少し無防備になる。そこは可愛いのだが、心配になるところでもある。  自分のいない所では絶対に飲ませたくないから、大学のゼミの忘新年会の時は死ぬほどやきもきさせられた。  早く自分の者にして、がっちり囲い込み、守ってやりたい。  今も、遠巻きに護衛は付けているが、いずれはしっかりと付けたいのだ。 「結人、好きだ。俺にはお前だけだ」  そう言って顎を上げると、フッと薄く微笑む。  少し濡れている魅惑的な唇に祥吾は口付ける。  初めの頃は、おずおずとして、されるがままだった。しかしこの頃は、結人も応えてくるようになっている。  祥吾は肉厚の舌で、結人の口腔内を十分に堪能し、溢れる唾液を啜ってやる。結人の唾液は蜜のように甘い。  解放された結人の唇はたっぷりと濡れて、煽情的だ。  祥吾は己の中心に熱が集まるのを感じる。いつも口付けるとそうだが、今までは理性で抑えてきた。  今日は抑えなくていい。その為にこの部屋をとったのだ。  結人を初めて抱くのだ。最上の環境が相応しい。自分にとっても、結人にとっても記念になるのだから――。  結人の同意――それは後からついてくる。祥吾はそう思っている。  口付けの後、結人はいつも足の力が抜ける。気持ちいいからだ。それが恥ずかしくて、結人は祥吾の胸に顔を預ける。それが祥吾を更に煽るとは知らずに……。 「結人、場所を移るか?」  どこへ? 帰るの? そう思った結人は頷く。  祥吾は結人を、ひょいと抱き上げる。  えーっ! 結人は驚く。  驚く結人を祥吾はベッドへと運び、優しく降ろした。結人の驚きは倍増する。 「えっ……かっ、帰るんじゃ」 「明日の朝な」  今更何を言っているんだ。今からお前は俺に抱かれるんだよ。 「心配いらない。優しくする。俺に任せていれば、お前は気持ちいいだけだ」  祥吾はあやすように結人の頭から背を撫でながら言う。  漸く結人は、今起こっていることの現実が分かってきた。  祥吾は自分を抱こうとしている。  何度も気持ちは告げられた。でもどこか現実的ではなかった。容姿、経済力を併せ持った人が、なぜ男の自分に惹かれるのか今一分からない。祥吾がゲイだから?  第一、自分はゲイじゃない……と思う。多分。  男を好きになったことはない。告白されたことはあるけど。  祥吾に対して好感はあるが、好きかと言えば、正直分からない。ただ、嫌いかと聞かれれば、それは否定できる。  今から祥吾に抱かれる――結人は男の経験は全くない。少し怖い、不安だ。  今から逃げ出せる? 多分無理。どうしよう……。  酔いもあって、結人の考えはまとまらない。  結人は下着だけの姿でベッドに横たわっている。  祥吾の愛撫は巧みで、産まれたままの姿になるのは時間の問題。 「あん、あっ……あん」  乳首を吸われ、結人は思わず声を漏らす。  抗う気持ちはあるけど、快楽には逆らえない。  乳首への刺激に、結人は自分の男の部分が反応するのを感じ、そこへ手をやろうとすると、祥吾の手に止められる。  そして祥吾は、結人の下着を脱がして、そこを露わにする。 「あっ、だめっ!」 「お前のは、お前に似て可愛いらしいな」  そう言うと、祥吾は結人のものをぱくっと口に含む。  結人は驚愕する。 「だっ、だめっ!」  恥ずかしさもあって、必死に抵抗するが、祥吾は全く斟酌せず口に含んだそれを舌で丁寧に愛撫する。    結人はあまりの気持ち良さに、全身に甘い陶酔が走る。 「あーっだめっ……いくっ、離してっ……」  必死に堪えたが、だめだ。爆裂的な気持ち良さに、結人はそのまま果てる。  結人の出したそれを飲み干した祥吾が顔を上げ、にやりとする。その表情は満足気だ。 「のっ、飲んだの?!」 「頭からかじりたいほど可愛いお前のだからな。代わりに飲んでやった。美味かったぞ」  結人は気持ち良さの余韻と、申し訳なさが入り交じり、わけの分からない思いになる。  結人にとって想像を超えた経験だ。

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