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第40話 極道のクリスマス

 そこへ、会長が姿を現す。結人には、いまだ久城以上に緊張する人。 「こうして見ると、中々壮観だな。初めて飾ったがクリスマスツリーも悪くないな」 「そうですね、大きくて圧倒されます。あっ、あのスーツ……」 「お前さんに恥ずかしい格好はさせられんからな。いいのがあったか?」 「俺が見立てたから大丈夫だ。結人が着たら見栄えするだろうな」  なんだか飾り人形のようなのりだが、そういう面もあるのだろう。極道で見栄っ張りなんだ。結人にも段々と分かってくる。 「離れの部屋も見てくるといい。今なら変更できることもあるからな」  来春から祥吾と二人で住む離れ。概ね完成が近付いている。結人も色々希望を聞かれたが、書斎さえあれば、あとはお任せした。細かいこと聞かれても分からないからだ。 「えっと……これ離れ?」 「そうだ、中にも入ってみよう。うん、どうした?」 「いや、ちょっと想像を超えているっていうか……これ一軒家だよね」  離れって言うから、もっと小さいものを想像していたのだ。ところがこれは、どう見ても普通に一軒家だ。 「お前と俺が二人で住む新居だぞ。親父たちの時もこれくらいの規模だった」  そうなのか、何もかも極道の規模は大きいって事か、クリスマスツリーも、そして離れも。  結人は祥吾の後を付いて中へ入る。玲も付いてくる。  成程、内装はこれからって感じだ。 「どうだ? なんか変更したい所はないか?」 「いや、ないけど二人には広過ぎるっていうか」 「ぼくもきてもいいでしょ」 「ここはお前の家じゃない」 「えーっ! ぼくもきたいもん!」 「駄目だ!」  叔父甥バトルが始まる。子供相手に一歩も引かない祥吾に、玲は涙目で向かっていく。結人は慌てて仲裁に入る。 「ああーっ、いいから。遊びに来ていいからね」  そう言って頭を撫でてやると、玲が抱きついてくる。 「全く、甘えやがって。結人、あんまこいつのこと甘やかすな」  玲が結人に抱きついたまま、祥吾を見上げる。その瞳は、おにいちゃんはぼくのものと言っている。  甥の挑戦的な瞳に、祥吾の火が付いた。  祥吾は結人を抱き寄せ、キスを仕掛ける。玲がいるから、当然結人は抵抗するが、祥吾はそれを許さない。  抗う結人を強く抱きしめ、その甘い口腔内を味わっていく。  結人は抗いながらも、その甘さに足の力が抜けていく。  立っていられない……祥吾に縋り付く。漸く祥吾は、結人の唇を開放する。 「うんっ、もう……」  濡れた唇に、潤んだ瞳。祥吾は、そのまま押し倒したくなる……ベッドは、まだ無いか……。 「おにいちゃん、ぼくにもちゅーさせて」  玲が結人を見上げながら訴えるのに、結人は我に返る。そうだ! 玲くんがいるんだよ! 全く子供の前で祥吾さんは……。 「馬鹿野郎、結人がちゅーするのは俺だけだ」  足の力が抜けてることもあって、結人がしゃがみ込むと、玲が抱きつき、結人の濡れた唇に口付ける。無論、口付けるだけの子供のキス。  玲が満面の笑顔で見つめるので、結人も可愛いと思い、そのおでこに口付けてやる。 「ったく、いい加減にしろよ」  祥吾と玲の叔父甥コンビの、結人の取り合い合戦は、今始まったばかり。これからも続くのを、今の結人は知らない。  その後、本宅の広間に用意されたクリスマス料理を見て、結人は圧倒される。  和室というミスマッチを除けば、完璧なクリスマス料理。 「これ、相川さん作ったんですか?」 「さすがにケーキは買ってきましたが、料理はここで作りました」 「凄いですね! もうびっくりです」 「そうですか、結人さんに喜んでいただいたら、わしは満足なんで」 「ありがとうございます。嬉しいです」  頬を染めて礼を言う結人に、相川は報われた思いを持つ。  和食の料理人だったので、洋食は専門外。レシピを検索しながらの料理だった。自分でもかなりの満足だったが、結人が喜んでくれるのが一番。その為に作ったのだから。  この日は鬼神一家始まって以来のクリスマスということで、会長を筆頭に久城たちも参加しての会食になった。  クリスマス料理の陽気さもあってか、結人は以前よりは緊張なく過ごせた。  広沢たち祥吾の側近達とは顔馴染みになっていることもあり、会話も弾む。  木原の言葉が重くのしかかっていた結人には、その重みから抜け出せた心地になる。それがクリスマスプレゼントだったかもしれない。  誰からの? 誰からだろう?

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