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第42話 結人のお披露目
大晦日、結人は何の気構えもなく本宅へ来た。
待ち構えていた玲に迎えられるのはいつものことだし、年末年始を本宅で過ごすのは二回目ということもある。
大晦日は、昨年と同じように過ぎた。叔父甥コンビの、結人はどちらと風呂へ入るのか、そして寝るかの攻防はあったが。
元日、顔を洗った結人を燁子が待っていた。
「結人さん、着替えましょう。私が手伝うわ」
えっ、着替え? そう思いながら燁子に連れて行かれた部屋には、既に正装を着付けた祥吾が待っていた。
「結人、お前も今日は正装だ」
えっ、正装? 何で……戸惑う結人。
「どっ、どうして僕も正装?」
「今日はうちの一家の主だった者が元日の挨拶に来る。そこで、お前を俺の婚約者と正式に披露する。だから正装だ」
「こん、婚約者って」
「婚約しただろう。身内へ披露するに今日はいい機会だ。元日に皆が挨拶に来るのは、毎年恒例だからな」
「で、僕がこれ着るの? いや、なんだか七五三だよ……」
「そんなことないわよ。結人さん凛々しくて似合うと思うわよ。さあ、着替えましょう。あっ、褌はさすがに私は部屋を出てるから、祥吾付けてあげて」
「ふっ、ふんどしーっ! いや、それは」
結人は手を横に振って拒絶する。そんなもの、生まれてこのかた付けたことは勿論、実物を見たことも無い。
「和服の時は褌のほうが良いのよ。最初は違和感あるかもだけど、段々となれるから」
「俺がしてやるから、とにかく全部脱げ」
「じゃあ、終わったら呼んでね」
そう言って燁子は部屋を出ていく。
祥吾は褌を手に、にやにやと嬉しそうだ。もうっ、この変態があーっと、にらみつける。
「早くしろ」
そう言って、にこやかに手招きされる。
何で、こんな正月早々変態じみたことを……と思うが、考えたら褌は日本の伝統かも……。
結人は渋々服を脱ぐ。下着も、と躊躇していると、祥吾に視線で促される。仕方ない、えいっとばかりに思い切って脱ぎ捨てる。
なんだかんだ思い切りがいいのは結人の長所。
真っ裸の結人に祥吾が褌を締める。
これが褌かあ……はあーっ、なんかため息が出るな。
「どうだ、締まり具合は?」
「いいのかなあ、よく分かんない」
「ふふっ、褌姿のお前も可愛いなあ。なんか変な気分になってくる」
「はあーっ、何言ってるの! もうーっ! って、これトイレどうするの?」
すると祥吾が、結人のものを触ろうとしたので、体を引いて拒絶する。一々触んなくて、口で説明しろよと思う。
「実演しないと分からんだろうが」
「分かるって! もーっ」
「ふっつ、お前は……。小の時は横から出せばいい。大の時はこれを外してしろ」
ふーん成程、だけど小はともかく、大はなんかあほくさいなと思っていると、燁子から「終わった?」と声掛けられたので、どうぞと招き入れる。
「あらーっ、いいわね。可愛いわよ」
燁子にまで可愛いと言われ、結人は恥ずかしさで赤くなる。それが祥吾の情欲を更に刺激していることは、勿論全く自覚はない。
その後は燁子によって、てきぱきと着付けられていく。結人は、人形のようにただ立っているだけ。
「さあ、出来たわよ。うーん、想像以上に似合ってるわよ。凄く素敵」
「ああ、よく似あっている。俺達で見立てただけはあるな」
そうなのだ、この着物は、祥吾と燁子、そして東吾の三人で見立てたのだ。結人にとって初の正装。それに相応しいものをと。
そんな事情は知らない結人。とりあえず、二人の反応が、可愛いよりも似あっているなのに、ほっとする。可愛いと言われたら、それこそ七五三だ。
三人で応接室に行く途中、玲と会う。どうやら結人を探していたようだ。
「おにいちゃん、かっこいいよ。すごくきれい!」
抱きついて言われる。かっこいいときれいは両立するのか? と、思うが褒めらえたのは、まあ嬉しい。玲にまで可愛いと言われたら立つ瀬がない。
玲に手を引かれて応接室へ入ると、会長が上座に鎮座している。勿論正装で、抜群の存在感。この人と比べたら祥吾もまだ若いと率直に思う。
結人は近寄り、手を付いて挨拶する。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
「ああ、おめでとう。良く似合っているな」
その後、お屠蘇を飲み、お節を食べながら、表での披露の流れを聞く。
とりあえず祥吾の隣に座っていればいいようだ。それが緊張するんだけど……。正座だから足も心配、何とかなるかな……。
「どうした?」
「いや、正座なれないから、足、大丈夫かと思って」
「ああ、正座は最初の挨拶の時だけでいい。後は崩して大丈夫だ」
「今日は披露と言っても身内だけだ。そう緊張することはないぞ。三月、うちの一家の者になった後の正式な披露目式は、他所の客も呼ぶ大々的なものになるから、その予行演習と思えばいい」
東吾からさらりと爆弾を落とされる。大々的な披露目式、何それ!? 今だって、緊張しているのにもっとじゃないか……。
結人はとほほな気分になるが、今は、それを考えるのはやめよう。とりあえず、今日を乗り切らないと、そう気持ちを奮い立たせる。
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