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第7話 ざわつきました、憶測で
昼休みの食堂には多くの生徒がごった返していた。食券を買うのに並んでいる人や、総菜パンを手にもって会計を待つ人。学年や性別を問わず一堂に会している。
その一角では合同食事会、もとい合コンもどきが行われていた。
「月城くんて、お昼ご飯はパン食べるの?」
「月城くんは何の科目が得意なの?」
「月城くんて私服おしゃれそうだよね、今度見てみたい!」
やはりこうなるか――名前もあまり知らない女子生徒たちからの質問攻めにあっている瑠華はにこやかに次々飛んでくる質問を返していく。その光景はまるでファンに囲まれたアイドルのようだ。瑠華を餌にこの食事会を仕組んだ男子生徒たちが蚊帳の外で無言で昼食を食べている。それとは対称的に瑠華が持っているパンは、まだ封が開いたきりで手をつけられていない。
「そういえば月城くん、最近演劇部の部室にいるって本当なの?」
「そうだよ。期間限定のつもりだけどね。今度の学園祭で劇をやる予定」
「凄い!何をやるの?」
「それは秘密。あぁでも、これからやる放送でもしかしたら何をやるのか発表するかも」
計ったかのように瑠華の言葉の後にスピーカーから放送開始のチャイムが鳴る。この時はじめて矢継ぎ早に飛んでいた質問の雨が止んだ。チャンスとばかりに瑠華はパンを頬ぼる。
放送委員の進行が進み、文化祭の紹介コーナーへと移っていく。これから起こるであろう事態に口角がわずかに吊り上がる。
『今日は演劇部から一条悠真さんが来てくれています。よろしくお願いします!』
『短い時間ではありますが、よろしくお願いします』
『今回、演劇部としては初めての劇になりますが準備の方は順調ですか?』
『何もかもが手探りで大変です。予算を最初に出したときは突き返されちゃいました』
とりとめなく放送は続く。始まる前までは賑やかだった食堂だが、今は少しだけ静かに感じる。それだけ演劇部――あるいは一条悠真は注目されいているのだろう。
昨日の事前の台本には無かった質問も何個か投げられていて、少しでも有益なことを聞き出したという放送委員の思惑も透けている。
『演劇部は2人しかいないと聞きましたが、2人で行うのですか?』
『実は助っ人で何名かに声をかけてます。その中には月城瑠華くんがいるんだけど……』
『月城瑠華さんですか!?』
『いいリアクションありがとう。答えるつもりはなかったんだけど……こうなるとバラしてるようなものだね』
『え……?』
『そろそろ時間みたいだよ』
『あ、あぁ……それでは今回は残念ながらここまでになります。ご清聴ありがとうございました!』
思いもしない発言に素が出てしまっている進行がハッと我に返り放送を締めくくる。
そして瑠華のいる食堂は恐ろしいほど静寂に包まれていた。悠真の発言の意図を必死に頭を動かして考えているのだろう。
「あの冬宮零が劇にでるってこと……?」
「明言はしなかったけど……あの話し方はそんな感じだったよね……?」
ぽつりと近くのテーブルからの会話が聞こえた。その会話を皮切りに女子生徒たちの声にならない悲鳴やうめくような声がドッとあふれ出す。もちろん瑠華も再びの質問攻めにあうのは言うまでもない。
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