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碧翠堂
「これは三千年前のエジプトのファラオが身につけていた王冠のエメラルドです。そしてこれは、北の曇った冷たい海で人魚の王子がはめていたサファイアの指輪です」
そう説明する鏡に映る碧翠堂の主人は、まつ毛の黒くて長い、まだ二十歳ばかりの青年だ。つやつやとした緑の黒髪が額にかかる。
「ほんとうなんです」
翡翠堂主人は、答える。
「それは、ほんとうのことなのです」
鏡の中の青年は、まどろみの中に生きていた。
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