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舌先

 水たまりの中に立ちすくむ待夜駅の膝は、震えていた。  ようやく、長い雨音が止んだ。  ぽたり、ぽたりと、病室で静かに落ちる点滴の輸液のように、雨だれが濡れた布地から滴り落ちた。ぶるぶるした膝がしらの震えがとまった。喉の奥まで見せていた口は、半開きにまで閉じられた。ぎゅっと閉じられた目が薄っすらと開けられた。  睫毛が呼吸音とともにあがり、硝子の瞳が見返した。  唇の間で舌が蛞蝓(なめくじ)のように動いていた。蕩けるような目つき。  舌が、唇を舐めた。  その舌先を、碧翠堂は噛んで、吸った。ガクガクと待夜駅の身体が痙攣した。  舌を吸う音だけが、壊れたぜんまい仕掛けの人形のような待夜駅と、碧翠堂の間に響いた。

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