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唇と縄と指

 少年の腿はどうしようもないほど震え、美しい顔が、熱帯夜に引き裂かれた悪夢の叫びのように歪んでいた。  碧翠堂は、柔らかなイタチの毛に、湿った紅をふくませて、待夜駅の唇に幾度も、幾度も、執拗に、なすりつけた。  紅が、内部と外部の境界である粘膜を、より妖艶に意味深に結界のように輝かせるように。  炎の冠のように燃える彼岸花より赤く、毒々しく、粘膜は光った。  偏執的な行為に耐えかねて、ぐっしょり濡れた腰布のすき間から蛞蝓の足あとのような粘液が滲み出ていた。  碧翠堂が腰布のすき間に指を差しこむと、ねっとりと、指に透明な液体が絡みついた。  彼岸花の茎から流れ出る毒の汁のように。  少年は膝をガクガクと震わせた。  もっと触ってほしいのだ。  ただ一本の指に擦りつけて、触れてほしいと、身をよじる。  食い込んだ縄の快感に、身をよじる。縄に身体をこすりつけるようにして、悶えるので、少年の皮膚は赤くなっていた。縄と皮膚のすれる感覚を求めるように、磔にされた少年は、腰布を尿で濡らし勃起した状態で白眼を剥き、身悶えした。  絞められる鶏のような悲痛な叫びの表情。  縛られた少年は、熱で赤くなった舌を淫らに紅く染められた唇の間から蛇のようにチロチロと出していた。  キス求めているのだ。  碧翠堂は、指を布切れのすき間で数度上下させてやると、少年は、身体をぴんと硬直させ引き裂かれるような歓喜の表情を浮かべた。

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