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猿轡
少年は、脚をぴんと突っ張らせ、全身を突っ張らせた。足も足の指も、足の裏も土踏まずも。
そして腰を突き出した。
ギチギチと縄が鳴った。木の十字架と縄と身体との間で葛藤が生まれた。互いにこすれ合い、呻き声のように鳴った。
嵐の夜のように。嵐の夜の古い家の鎧戸のようにギシギシと鳴った。嵐の風雨に翻弄される若木のように。振り乱した髪が、額にかかっていた。
一本の指による、たった数度の刺激では足りないというように、ギシギシと縛られた少年は磔を揺らした。
局所への直接的な接触を求めているのだ。
だが、碧翠堂の指は、うっすらした腹部に触れたのみで、猛り狂う局部には触れていなかった。
せめてもっと全身への愛撫をと、少年は、それを、縄と磔の十字架に求めた。縄が食い込み刺激するのを、愛撫として求めていた。
優美な少年が、獣のように欲望剥き出しの姿になったのを見て碧翠堂は、満足した。
碧翠堂は、布切れのすき間から指を抜いた。
「おぉ……」
囚われの少年は初めて呻き声を漏らした。
命乞いをしているのだ。いや殺してくれと言っているのだ。
碧翠堂は、待夜駅に切り裂いたシャツで作った布切れの猿轡をギリギリとかたく噛ませた。
待夜駅の顎は、すぐに滴る唾液で汚れ、濡れた。
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