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 碧翠堂は、磔にされた少年の最後の腰布と日のあたらない蒼白い皮膚の間に鉄の刃をすうっといれた。  猿轡を咬まされた待夜駅の唇が、わなわなと、昆虫に蜜を吸われる植物の花弁のように震えていた。  ジョキリと鈍い音がして腰布がぺらりと重く腿にはりついた。  隠花植物のような茎がぐったりと濡れそぼたれて項垂れていた。  布きれを剝ぎとった待夜駅の柔らかな器官から腿をつたい流れ落ちる黄金水。黄色瑪瑙より高貴なそれを、碧翠堂は、跪いて、舐めとった。聖なるものに仕えるように、爪先から、腿の内側まで、丁寧に舌を這わせた。  その間中、ひと言も話さなかったのは、一部始終を猫に見られていたからだ。  床に這いつくばって、床にこぼれたものも、すすりつくし舐めつくしている碧翠堂の頭を、待夜の柔らかい足の裏が撫でた。

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