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待つ夜
碧翠堂は、待夜を待った。来る夜も来る夜も。
ある夜、ことりと音がした。碧翠堂は、窓を開けてのぞいた。
漆黒の闇から黒猫が帰ってきた。
でも、待夜駅は戻らなかった。
それでも碧翠堂は、待夜駅の屋根裏部屋で、ずっと待っていた。何かを待つことが習慣になっていたのだ。
待夜駅は、人手に渡った。
それでも碧翠堂は待っていた。
期待して、裏切られることに疲れていたので、待夜駅のほかの何ものをも、碧翠堂は、もう待つことをしなかった。
碧翠堂の髪に白いものが混じり、やがて皆白くなった。待夜が帰ってきた時のために髪を黒く染めた。待夜が自分を見分けられるように。
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