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第3話 僕を保護してくれた人
「……あれ?」
崖から落っこちたはずの僕は、気付けばベッドの上にいた。
気を失った僕を介抱するために、誰かが背負ってここまで運んできてくれたのだろうか。
それにしても、と僕は部屋の中をぐるりと見回す。
随分と中世を感じさせる部屋で、病院のベッドではないことだけは断言できそうだ。
そして、ベッドからはとんでもなく良い香りがする。
どんな洗剤や柔軟剤を使っているのだろうか。
お世話になったお礼をしたあと、もし雑談をする機会があれば是非尋ねたい。
勝手に部屋を彷徨いていいものかわからず、一応そのままベッドでゴロゴロしていると、ここ最近の心労による睡眠不足のせいか、自然と瞼が落ちていたらしい。
「お前は何者だ」
ぐ、と両手を後ろ手に掴まれたうつ伏せの状態で、再び目が覚めた。
ひどく冷たい声が、鼓膜を震わせる。
殺気立つような相手の苛立ちを肌で感じて、軽く慌てながらも謝罪をした。
「す、すみません、寝てしまって……!」
「動くな」
起き上がろうとしてもその声の持ち主が僕の上に馬乗りになっているらしく、微動だにできない。
寝ている間に、僕は何かしてしまったのだろうか。
「いい加減、諦めたものだと思っていたが……こうして堂々と寝所に潜り込まれるのは、久しぶりだな」
寝所に潜り込む?
何を言っているのだろうか、この人は。
一瞬呆気にとられたが、どうやら上に乗っている相手から誤解されていることに気付く。
もしかして、僕を保護してくれた人とこのベッドの持ち主は、別の人だったのだろうか。
確かに自分のベッドを見知らぬ他人に占領されていたら、驚くのも無理はないのかもしれない。
相手にとっての僕は、明らかに変質者だろう。
ならばと抵抗しようとしていた身体から力を抜き、自分が相手を害するつもりはないことを態度で示そうとした。
その一方で、誤解を解くために口を開く。
「あの、僕は」
「お前……なんだ、このフェロモンは」
「え? フェロ……?」
その瞬間、僕の周りは、ぶわりと先ほど嗅いだ、物凄くいい香りに満たされた。
その香りを思い切り吸ってしまった僕の身体は、急な発熱に見舞われる。
なんだろう、この症状は……!?
熱を帯びるけれども、明らかに風邪とは違う。
脈が速くなり、呼吸が乱れる。
ずくずくとペニスに熱が集まり、身体の全身の感覚が敏感になった。
肌に触れるシーツが、男の手が、少し動くだけで脳に快感物質が打ち込まれた気がした。
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