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第8話 互いのメリット
「いやいや僕、この世界に来てまだ二日目の異世界人ですけど」
「そうだね。でも結婚って、タイミングだと思うんだ」
結婚はタイミング。
それは同感だけれども、結婚ってこんなに直ぐに決めるものだっけ?
まあ、僕も元妻とスピード結婚をしたから、人のことは言えないのだけど。
「僕が異世界から来たって、エルダーさんは信じてくれていますか?」
「勿論だよ。そもそも、昨日君を裸にした時に気づくべきだった。見たこともない衣装を着ていたしね」
「ええと、この世界の人間ではない僕はΩではなく男だと思うので、僕と結婚しても子どもはできませんが」
日本の一般常識を口にする。
エルダーさんの精を受け続けたとしても、僕に子宮なんてできるはずもない。
僕は男で、Ωじゃないのだから。
神妙な面持ちで話した僕に、エルダーさんは明るく笑って言った。
「構わないよ。そもそも発情しないαなんて、βどころかΩも孕ませにくいからね。君に求めるのは、私の子どもを生むことではなく、私の伴侶として傍にいて欲しいということだ」
エルダーさんの言葉は、僕の胸に突き刺さった。
そうだ、僕は元妻に、こう言って欲しかったんだ。
大事なのは、僕と一緒に過ごしていくことなのだと。
なのになんで、昨日知り合ったばかりのこの人が、僕の欲しかった言葉を言ってくれるのだろう。
泣きそうになる気持ちを抑えるために口を閉じた僕に、エルダーさんは畳み掛ける。
「私はこの国でそこそこの地位も肩書きもあるのだけど、『欄外』だから結婚相手には恵まれなくて。今まではこのままでいいと思っていたけど、君という伴侶ができたら、親も安心するし、私の人生も満たされると思うんだ」
なるほど。
僕たちの結婚は、お互いにメリットがあるということか。
僕はエルダーさんに保護して貰えて、僕はエルダーさんの憂いを取り除く。
恋愛結婚でも政略結婚でもお見合い結婚でもない、契約みたいな結婚だ。
どうせこの世界で生きていかなければならないようだし、僕と同じ心の傷を負っている人の助けになれるならば、それに越したことはない。
僕はこくりと頷いた。
「わかりました」
まさか僕が、異世界で同性婚を果たすとは思わなかった。
それ以外の道はなかったともいうけれど、初めての出会いが最悪だったわりには、僕が彼に抱く感情は好意だった。
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