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第11話 新婚生活
僕と契約結婚をしようと決めたあとのエルダーさんの行動は早かった。
異世界人として僕の戸籍を作らせると、僕たちはさっさと書面上で入籍した。
式を挙げようというエルダーさんには、知らない人に囲まれるのが嫌だと言って辞退させて貰った。
二人きりで挙げるのはどうかと提案されたけれど、契約結婚なのに余計な費用と時間をかけさせたくはなくて、却下した。
重婚が当たり前のこの国では式を挙げるほうが珍しいらしいし、エルダーさんは残念がっていたものの流石に同性と結婚式を挙げることは僕にとって照れくさい。
結婚したあとはてっきり放置されるのだと思っていたが、エルダーさんは常に僕を気遣ってくれた。
食事や寝室もずっと一緒で、気づけば毎日抱かれている。
それは契約結婚とは思えない普通の夫婦のような、いやむしろラブラブカップルのような新婚生活だった。
エルダーさんの屋敷は、驚くほどに大きくて立派だ。
どうやらこの国は貴族社会らしく、エルダーさん自身も爵位持ちだそう。
エルダーさんは魔法団の魔法師団長をする傍ら、この国の王子様の家庭教師も任されているらしい。
僕が契約結婚した相手は、城や街の防御魔法みたいな大掛かりな魔法や、透明化や洗浄なんかの特殊な魔法も簡単にできてしまう、なんだか凄い人だった。
「イヅルは屋敷でゆっくり過ごしてくれればいいよ」
エルダーさんにはそう言われたけれど、僕は日中、テレビもパソコンもスマホもない世界での時間の潰し方がよくわからなかった。
家事をするにも、屋敷の中にはメイドさんたちがいるし、彼女たちの仕事を奪うわけにもいかない。
何か僕でもできそうな仕事はないかと尋ねてみたところ、結局エルダーさんの執務室で、書類の不備点検や書類の分類などをする、簡単で補佐的なお仕事をさせていただけることになった。
「ねえ、異世界人のイヅルって、あんたのこと?」
「え? えと、はい」
そんなある日、僕より少し背の高い男性が話し掛けてきた。
エルダーさんからあまり知らない奴と話すなと言われているのに、つい反射的に頷いてしまう。
服装からして、エルダーさんと同じ魔法団在籍かな、と思った。
どちらさまでしょう、と僕が聞く前に、相手はぐっと顔を寄せて話し始める。
「エルダー様と結婚したって、本当?」
「はい、本当です」
僕は再びこくりと頷き、そっと自分の首輪を撫でた。
重婚が当たり前のこの国では既婚者であることを証明する必要はないのだが、エルダーさんは随分と昔の風習である、既婚者のΩが身に付けるという首輪を僕にプレゼントしてくれたのだ。
「やっぱり、そうなんだ。それでさ、ちょっと聞きたいんだけど……エルダー様が|欄《・》|外《・》という話は、嘘だったりするの?」
不躾な質問に、内心眉を顰めた。
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