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第12話 単なる個体差

自然と唇を噛み締めたようで、じわ、と血の味が口内に広がる。 「なぜそんなことを聞くのですか?」 「あんたにエルダー様のフェロモンがずっと染み付いてるから、もしかしてエルダー様は『欄外』じゃないのかもしれないって噂が流れてるんだよね」 なぜエルダーさんのフェロモンが僕についていることと、欄外じゃないことが関係してくるのだろうかと思いながら尋ねる。 「そうでしたか。僕にはよくわかりませんが、エルダーさんが欄外じゃなかった場合は何か問題でもあるのですか?」 僕がそう言うと、相手は目を見開く。 「え? 本気で言ってるの?」 「はい。すみませんが僕は、この国の事情には疎いので」 「信じらんない……」 どれだけ驚愕されても、わからないものはわからない。 だから、教えて欲しい。 「エルダー様はとても優秀なαだから、欄外じゃないならみんな、嫁ぎたいと思ってるんだよ。夫としての最有力候補なわけ。とはいえ発情してくれないなら嫁ぐ意味もないからさ、それを確認したいってこと」 相手はそう言いながら、瞳を期待で輝かせた。 きっと彼は、エルダーさんが欄外であることを否定して欲しいのだろう。 そういえばこの国は重婚を認める国だったということを思い出して、なぜか僕の胸はズキズキと痛みだす。 「僕からは答えられません。発情するかしないかは、本人に聞いてください」 エルダーさんは、僕相手には発情すると言っていた。 人によって違うということは、個体差なのではないだろうか。 今のところ、僕以外には発情しないというだけで。 「発情しないならなんで、お前にエルダー様のフェロモンが染み付いてるんだよ!」 それ以外ないじゃないか、と吠えるように言われて、僕は驚いた。 え。 もしかしてフェロモンが相手に染み付くことは、「ヤりました」と同義なのだろうか? 知らなかった、恥ずかしすぎる……!! 顔を真っ赤にしながら口ごもる僕を見て、その男の人はニヤリと笑った。

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