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家族になろうよ(1) 刀視点
刀は司に執着していた。どんなに愛し合っても一つになれない。そんなもどかしさが、刀を焦らせていた。
先月は見合い話のせいで司を悲しませてしまった。あんなに不安な思いをさせたなんて、嘘をつかれるまで気づかなかった。それが悔しい。
いつも一緒にいれば、そんな誤解を抱かせる心配は無いかもしれない。けれども、司が誰かの大切な息子である以上、そして自分の生徒である以上、それは現実的じゃなかった。
せめて隠し事はせず、思っていることは何でも話そうと約束したが、真面目な生徒会長の司が守ってくれるとは限らない。年下という遠慮もあるだろう。
「先生……」
ふと、司に頬を触れられて刀は我に返る。司は不安そうな表情をしていた。
「怖い顔をしています。何か怒らせることをしましたか?」
「い、いや。そんなことは無いぞ。司と愛し合えて、とても嬉しいんだ」
そう言って、誤魔化すように唇を重ねる。きっと焦りが怒りとなって、刀を鬼の形相に変えていたのだろう。また、司を不安にさせてしまったと、刀は心の中で反省した。
「先生、もっとください……」
司の潤んだ瞳が刀を駆り立てる。
「よし、たっぷり可愛がってやるぞ」
飽くことを知らない性欲と愛情。本格的な夏を間近に控えた7月の陽気が、二人の体を汗で濡らす。限られた時間の中、刀は司の気が済むまで求め続けた。
※
「東京へ行くんですか?」
「そうだ。友達の結婚祝いでな」
司の驚いた顔が目の前にある。刀は思わず唇を重ねてしまった。
大学時代の友達が結婚した。正確に言うと、子どもができたので慌てて結婚した。生活にゆとりが無いので式は挙げないが、せめて友達だけでも盛大に祝ってあげようという話になったのである。
刀も含めて仲良し男4人組。出身地も専攻もバラバラだが、何故か気が合った。大学時代はいつも行動を共にして、遅くまで酒を飲んだり、熱く語りあったりしたものである。就職して道はそれぞれ分かれてしまったが、今でも機会があれば頻繁に会っていた。
「1泊2日とは、ずいぶんと慌ただしいですね」
「まだ夏休みじゃないからな。他に観光する余裕も無いや」
腕の中で、司が寂しそうな顔をしたように見えた。もちろん、刀だって寂しい。たとえ学校で毎日会えたとしても。それくらい、司は生活の一部になっていた。
「これ、司にやるよ」
刀は寝床の傍らに置いてあったカバンを弄り、一本の鍵を取り出した。スチールのリングだけが付いた無骨な鍵。
「これは?」
「この部屋の合鍵だ。俺がいない間、自由に使っていいぞ」
「そんな、先生の部屋なのに……」
司はまじまじと鍵を見つめる。けれども、刀の真剣な眼差しに気圧されたのか、はにかみながら頷いて、鍵を握りしめた。
「……大切にしますね」
その仕草が可愛らしくて、収まっていたはずの刀の股間が熱くなる。やっぱり司が大好きだ。刀はあらためて自覚するのだった。
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