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相変わらずな僕ら(2) 司視点 性描写有
それ以来、司は刀と、塾へ行く合間を縫って会うようになった。ずっと張り詰めていた司にとっては息抜きになったし、本命に合格するための励みにもなった。
この前は、両親が望んだ東京の私立大学を受けるために、初めて一人で上京した。刀は心配したし、寂しがったが、その分たっぷりと愛してあげて、快く見送ってもらった。
本命ではないから、たっぷり東京を楽しもうかと思ったのに、真面目な司は直前まで過去問と向き合っていた。結局、両親や刀へのおみやげを買うくらいしかしていない。それを刀に話すと
「それでこそ、俺の司だ」
と安心して、胸の中へ飛び込んできてくれた。
一見、いつもと変わらないような二人。けれども、ただ一つだけ元通りにならないことがあった。
司は内心、今日も自分が刀を抱くのだろうかと懸念する。このまま刀が押し倒してくれたら、と願ったが、先に万年床へ横たわったのは刀だった。司がその上に重なると、うっとりした顔で両腕を背中に回す。
「司、俺をめちゃくちゃにしてくれ」
「う、うん……」
刀が大好きだからこそ満足させてあげたかった。たとえポジションが逆転しても。それなのに背中がひどく寒い。
「司、俺の中に入れて……」
刀が司のいきり立った一物を秘所へと導く。そこはすでに司を待ち構えて、ヒクヒクとしていた。
挿れるのは気持ち良い。それは嘘ではない。一方で、自分がリードしなければいけないという重圧に押しつぶされそうだった。僕は甘えたいのに……。そんなわがままが、つい口をついてしまいそうになる。
腰を動かしながら、刀の一物も扱いてあげる。次第に絶頂に近づいているのが、全身で感じられた。中が締まってくる。まるで司を搾り取ろうとするように。
「先生、いっちゃうよ。中に出すよ」
そして、司は刀を抱き竦める。5cm小さな体は、腕の中にすっぽりと収まって、わなわなと震えていた。
司によって後始末を終えた刀は、安心したように眠ってしまった。司が寄り添うと、赤ん坊のようにしがみついてくる。その背中に腕を回しながら、司は小さくため息をついた。
こんな関係がいつまで続くのだろう。もしかしたら、永遠に刀は司に甘えてしまうのかもしれない。そう考えると、司は刀を愛し続けるという自信が揺らいでしまいそうだった。
※
家に帰ると、見慣れた青いシトロエンが停まっていた。わざわざ遠くから会いに来たのだろうか。司は家の中へ入ろうとせずに踵を返すが、それより早く扉が開いて佐伯が現れた。
「やっと帰ってきたね。ずいぶん待ったよ。このまま会えずじまいだったら、どうしようかと思った」
かつて、学校の女子たちをときめかせた爽やかな笑顔。その裏に何が隠れているか、司はよく知っている。
「塾まで迎えに行ったのにいなかったね。どこに行ってたんだい」
耳元でそう囁かれて背筋が凍る。どう答えるか迷っているうちに
「少しドライブでもしようか」
とシトロエンの助手席に押し込まれる。司が拒む間もなく、シトロエンは滑るように走り出した。いつものように静かで、外の音は何も聞こえない。背中が温かくて、つい眠ってしまいそうだった。
「私がプレゼントしたレザージャケットは着ていないんだね」
佐伯に指摘されて司は言葉を詰まらせる。暑かったからです、と下手な嘘をついた。
「言わなくても分かるよ。あの男に会いに行ってたんだろ?」
司は何も言えない。
「こないだは君の親御さんから電話がかかってきてビックリしたよ。この街にいらっしゃるなら寄ってくださればいいのにって。もちろん、最初は驚いたさ。でも、すぐにピンときたよ。司が嘘をついてるって」
「……ごめんなさい」
「酔っ払いのふりをするのは大変だったよ」
佐伯は愉快そうに笑う。けれども、すぐに声を低めて
「それで気づいたんだ。あの男に会いに行ってるってね。卒業するまで会わない約束だったんじゃないのかい?」
司は何と答えれば良いのか困ってしまう。話してしまえば、刀の弱みも握られてしまうだろう。それでも、胸の中に溜まったモヤモヤを誰かに打ち明けたくて仕方なかった。
「どうやら、その体に聞いた方が良さそうだな」
「か、体って……」
佐伯は涼しげな表情でウインカーを右に倒した。
※
「こんな広い部屋……」
「何か不満かい?」
まるでマンションのモデルルームのように広々とした空間。司は所在無げにポツンと立っていた。
「さあ、座りなさい」
佐伯は備え付けのソファに腰かけ、すぐ隣をポンポンと叩く。司は遠慮がちに腰を下ろした。
「その顔だと、スイートルームは初めてのようだね」
ホテルに泊まったことさえ、そんなに無いのだ。スイートルームなんて、司にとって夢のまた夢。ボーイが入ってきて、アフタヌーンティーとスタンドに盛り付けられたお菓子を置いていく。司は慌てて、佐伯から身を離した。ボーイが去ると、力強く引き寄せられる。
「お茶を飲むなら、1階の喫茶コーナーでも良かったのに……」
「そうはいかないよ。私は『体に聞く』と言ったのだからね」
司は頬を膨らませる。そこに佐伯が唇を重ねてきた。久しぶりの口づけ。先ほど出したばかりなのに、司の股間は佐伯の体臭を嗅いで反応してしまう。
「体は正直だ。私を愛しているんだね」
佐伯が嬉しそうに笑う。司は慌てて首を横に振った。
「さあ、お茶が冷めないうちに飲んでしまおう。好きなお菓子を食べていいよ」
司はごくりと唾を飲む。一つひとつは小さいけれど、高級なのは質感で分かった。堪えきれずにペストリーへ手を伸ばす。
「美味しい……」
「喜んでくれて良かったよ。さあ、何があったか話してくれるね」
ここまでもてなされたら、もう拒めない。司は、刀に泣きながら呼び出されてからのことをポツリポツリと話し始めた。
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