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相変わらずな僕ら(4) 刀視点 性描写有
刀はドアホンの音で目を覚ました。どうせ、訪問販売か宗教の勧誘だと思って無視すると、すぐに扉を勢いよく叩く音が聞こえた。
「いるんだろ、先生」
その声に弾かれて、刀は布団から飛び出し、慌てて扉を開ける。そこには切羽詰まった顔をした相川がいた。
「バ、バカ! 服くらい着ろよ」
刀はシャツにトランクスという出で立ちだった。急に照れ臭くなり、内股になって両手で股間を隠す。
「ど、どうしたんだよ……」
戸惑いつつも、相川がこうして訪ねてきてくれたことが嬉しかった。もう逢えないと思っていたから。刀がジャージを着ようと奥へ行くと、相川もついてきてドカッと腰を下ろす。
「弓岡を見たんだ。職場の前で」
「まだ、家に帰ってなかったのか」
刀はスマホを見る。部屋を出てから、もう結構な時間が経っていた。
「あの、佐伯って奴と一緒にいたぜ」
「そんなはずは……」
佐伯は年明けから遠く離れたところに赴任しているはずだった。別人じゃないのかと問いかける。
「青いシトロエンに乗ってる奴なんて、そういないだろ」
「あの野郎……何しにきたんだ」
刀は苦虫を噛み潰したような顔をする。やっと邪魔者がいなくなって、司とも気兼ねなく会えるようになったというのに。
「弓岡は浮気してるのかもな」
相川はにべもなく言い放つ。
「まさか……」
「ちゃんと可愛がってやってんのか?」
刀は言葉に詰まる。あれからずっと、刀は可愛がられる側だった。ただでさえ受験で張り詰めている時期だ。自分が甘やかして、体の力を抜いてやらなきゃいけないのに。
けれども、体が反応しない。いや、大きくもなるし、硬くもなるのだが、抱こうという気持ちが起こらない。抱かれたいという気持ちばかりが先走ってしまう。司は優しいから、決して拒まないことを知っている。
今さら自分が野郎ぶって司を抱くには気恥ずかしさもあった。女のように啼く自分が野郎ぶるなんて、司に笑われそうな気がした。
「そりゃ、弓岡に浮気されても文句は言えないな」
刀の話を聞いた相川は、呆れたようにため息をついた。
「おまえが悪いんだぞ。俺を女の代わりにするから……」
相川に鋭く睨まれて、刀は口を噤む。それでも、至近距離で熱気とタバコの匂いを感じ、股間は盛り上がり始めた。相川に気づかれて笑われる。
「俺を見て興奮してるのか」
堪らず、刀は相川に手を伸ばす。拒まれないと分かると、遠慮なくその体に触れた。
「やめろ。弓岡のためにも野郎に戻れよ。俺はホモにはならないぜ」
突き放そうとする相川を、刀は濡れた眼差しで見つめた。
「分かったよ。だから、あと一回だけ……。それですべて忘れるから」
相川はしばし戸惑っていたが、意を決したように刀を万年床へ押し倒した。
「あと一回だな。約束だぞ」
うつ伏せにされ、ジャージのズボンがトランクスごと下ろされる。薄暗い部屋の中で、刀の剥き出しの尻が白く浮かび上がった。
背中越しに相川がズボンを下ろす音が聞こえる。刀は侵入を今か今かと待ち構えた。
「入れるぞ」
その言葉を合図に、いきり立ったものが入ってくる。ついさっき司の太いものを入れたそこは、難なく相川を受け入れた。気持ちいい。相川でそう感じたのは初めてだった。
いつものように、相川は溜まった精を吐き出そうと性急に腰を動かすだけで、気遣いも労わりもない。それでも刀の体は犯される歓びに震えていた。
「相川。俺はおまえが……」
「言うな!」
ずっと隠していた本当の気持ちが、唇から零れる前に手のひらで遮られる。刀の目からは涙があふれていた。
「畜生、相変わらずいい穴してるじゃないか。いくぜ!」
相川に抱き竦められる。体の中に熱い迸りを感じて、刀もまた万年床を汚していた。しばらく互いの呼吸だけが部屋の中に響く。このままずっと、相川の重みと体温を感じていたいと刀は願った。
やがて相川が体を起こす。憐れむような目つきで刀を見下ろしていた。
「約束どおり、弓岡を抱いてやるんだぞ」
刀は顔を上げて、相川をじっと見つめる。どうしてこいつは、こんなにも俺を突き放すのだろう。顔を近づけて唇を重ねる。不意打ちを食らって、相川は束の間それを受け入れた。そして唇が離れると、無遠慮に唾を吐き出す。
「男とキスなんて気持ち悪いなぁ」
どこまでも悪態をつくこの男が、刀は堪らなく好きだった。司では代わりにならないのを知っている。それでも……。
「次こそは司を抱くよ。約束だ」
そう言って右手の小指を差し出す。指切りだと言うと、相川は渋々小指を差し出した。
「ガキじゃあるまいし」
「形にしたら忘れないだろ。指差し確認みたいなものだ」
例え話に相川が吹き出す。刀も笑った。
「弓岡に確認するからな。逃げるんじゃないぞ」
「抱いたら、褒美をくれるか?」
返事をする代わりに相川は刀を小突いて部屋を出ていく。刀は裸のまま、万年床で見送るしかなかった。もし、司を抱いたと言ったら喜んでくれるだろうか。あいつは根が優しいから、褒美でまた犯してくれるかもしれない。そう考えると、刀は頑張れそうな気がするのだった。
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