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後編②

「ようこそ、ディーク牧場へ。新鮮な卵やミルクはいかがですか?」  のどかな村にあるとある牧場の入り口で、道行く人に明るく声をかける青年が1人。牧場からは、放牧された牛や羊などの元気な鳴き声が聞こえてくる。  俺が選んだNPCは、このディーク牧場の入り口で案内役をしている青年だった。  このゲームで牧場を利用するプレイヤーは結構いる。食材屋のように牧場の販売コーナーで卵やミルクなど料理に使う食材が買えたり、装備品やアイテムを作るための羊毛や羽などが買えたりするからだ。あとはなかなか現実で遠出できないプレイヤーが癒やしを求めて来ることもある。プレイヤーが集まりやすい場所は、すなわち俺たちNPC姦プレイヤーにも人気の場所なのだ。  先週のウェイターNPCは、ほぼ自分で動いてなかったが、接客台詞が多かったのでちょっと疲れてしまった。なので、牧場の中でも台詞の少ない案内役の青年を選んだ。牧歌的な景色に癒やされたかったのもある。あとは神官NPCのときのような下心。俺NPCの絞りたてミルクもいかがですか、みたいな。  土曜日の人の多い時間帯。牧場に買い物をしに入っていくプレイヤーをNPCの視界越しに眺めていると、俺NPCの目の前に男性プレイヤーがやってきた。プレイヤーとNPCは容姿や服装で判別がしやすくなっている。  俺NPCはにこやかにプレイヤーに向かって決められた台詞を発した。 「ようこそ、ディーク牧場へ。新鮮な卵やミルクはいかがですか?」 「ようお兄さん。アイコンついてるってことは中に人入ってるんだよな? ちょっとヤらせてもらうな」  ニカッと笑ったプレイヤーが俺NPCの背後に回り、NPCが着ているオーバーオールを脱がせる。どうやら買い物客じゃなくてNPC姦プレイヤー目当ての攻めプレイヤーだったようだ。  初めていつもの人とは違う攻めプレイヤーに当たって一瞬身構えたが、好青年な見た目のアバターで、さわやかな笑顔でわざわざ声をかけてからプレイをはじめる優しさにすぐに俺の気は緩んだ。  下着も脱がされ、俺NPCはのどかな牧場の入り口でTシャツ1枚に下半身丸出しの変態になった。 「このあと落ち合う予定の友達が最近プレイヤー入りのNPC姦にハマってるらしくて、ちょっと試させて。……えーっと、設定メニューの……」  そう言って攻めプレイヤーは俺NPCの設定を確認しはじめた。返事もできないしどのプレイヤーが入ってるかわからないのに律儀に教えてくれるあたり、とてもいい人なんだろう。 「あとはここを……」 「……っ!」  攻めプレイヤーがそう呟くと、俺NPCのアナルからとろとろと液体が垂れだした。どうやら、NPC設定でアナルから愛液が出るようにしたようだ。そして、俺NPCのアナルに指を入れ軽くナカを確認する。 「んーと、大丈夫そうだな。じゃあ挿れるな」 「……っ、ぁっ♡」  指を引き抜かれたアナルに、攻めプレイヤーのちんぽがずぷっと挿入ってきた。すぐにちんぽが挿入るように設定したようで痛みはない。ちんぽをすべてナカに収めると、攻めプレイヤーが律動を開始した。 「あっ♡ あんっ♡ あ、ぁあっ♡」 「んっ……んー? なんだろ、普通のNPC姦と変わんねえ、かな……っ」  意外と力強い動きで攻められ、ナカがきゅんきゅんうねる。だけど、いつもよりもどこか物足りなさを感じていた。 「たしかに声はいいけど……あ、ごめん。中のあんたは全然悪くないんだ。人入ってると違うことできるって聞いてたんだけどなにが違うのかわからなくて……」 (もしかして……状態リンクのことか?)  この攻めプレイヤーはNPC姦プレイのことをよく知らないようだから、その機能について気づいていないんだろう。人が入っていないNPC姦の経験があるだけに気づきにくいのかもしれない。  そして、そのことに気づいてから俺も物足りなさの理由がわかった。状態リンクは中のプレイヤーの状態が反映されるだけでなく、ただNPCの中に入っただけの状態よりもNPCが受けた刺激がプレイヤーの脳に感じられる仕組みになっているようだ。つまり、通常のプレイヤーと同じような五感接続に近い状態。  だから、いつもよりちんぽの感触が遠いのか、と俺は納得した。だが、NPCの中に入っているだけの俺には攻めプレイヤーに伝えることはできない。 「ちょっとあいつに詳しく聞かないとな……っ、ふぅ……と……そろそろ待ち合わせ時間だから、終わりにするよ……っ、ぁ、イく……っ」 「ああぁっ、あんっ! あぁっ……っ♡」  腰の動きを早め、攻めプレイヤーが俺NPCのナカに射精した。最後までナカに出し切ると、彼はてきぱきと俺NPCの服を着せ直す。いつもは活動限界時間が来て強制的にログアウトして終わってるから、服を着せられるのは初めての体験だった。 「全然気持ちよくできなかったよな、ごめん。もし次があったら気持ちよくなってもらえるように頑張るな。じゃあ!」 「またのお越しを……、お待ちしています……っ」  そう言って最後まで好青年だった攻めプレイヤーが去って行き、その背中に向かって俺NPCが見送りの台詞を発した。もちろん、次に会えたとしてもわからないのだが。それでもああやって言ってくれる気遣いは嬉しかった。  ――だけど、そんなことにほっこりしている場合じゃない。俺の身体は中途半端に与えられた刺激で、イくこともできずにもどかしくてたまらなくなっていた。もっとねっとりぐっちょり激しく攻められることに慣れてしまった身体が切なさを訴えている。 (早く、誰か……犯してくれ……っ♡)  そう中の俺が叫んでも誰にも届くことはない。  今この瞬間ばかりは、プレイヤーが大勢いる場所のNPCを選ばなかった自分を恨みたい。このままNPC姦プレイをしてくれる攻めプレイヤーが現れなかったら、早々にログアウトしてアナニーに勤しむしかない。 (ほんとは、あの人に抱いて欲しい……でも……)  待ち合わせもしていない、フレンドでもないのにそう都合よく来てくれるなんてことはないだろう。身体の疼きに耐えられなくなってきた俺は、ログアウトしようとシステムウィンドウを開いた……。

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