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番外編① プレイヤーではじめまして②

「――やぁっと来た。遅いよナギ。遅刻はよくないね、お仕置きされたい?」 「……へぁ……?」  とろけるようなイケボが聞こえたと思ったら、ぎゅうっと後ろから誰かに抱きしめられる。間抜けな声を出した俺の視界の端でふわりと揺れた、薄く紫がかった金の髪。俺のプレイヤー名を自然に呼んだが、こんなイケボのフレンドはいない。だけど、俺はこの声を知っている。 「シュン、さん……?」 「うん。シュンでいいよ」  腕の力が緩められたので、振り返って声の主と向き合う。目の前には、先週牧場で俺が入ったNPCの視界を独占し続けた攻めプレイヤーこと、シュンが立っていた。プレイヤーは冒険者という設定なのに、装備している服は魅力以外上がらない――普段着だとかデート服だとか呼ばれているものだ。鎧なども身につけておらず、冒険に行く気が一切感じられない。そういや牧場でヤってたときもこんな服装だった気がする。  そんなことを初期装備アバターの俺が考えていると、突然腕を捕まれた。 「シュン? あのー、どこに行くんですか……?」 「敬語もいらないよ。こんなとこで話してても時間がもったいないでしょ。今日の待ち合わせはなんのためだっけ、淫乱くん?」 「あ、たしかに……」  待ち合わせた目的を思い出して頬が熱くのなるのを感じながら、彼に連れられて大通りを進む。今まで俺たちがしてきたことはただ1つ。今日も当然そのために会っているので、シュンは宿屋の前に着くとそのまま中に入っていった。  一般的なゲームと同じようにこのゲームでも宿屋を利用すればHPやMPを回復できる。その場合は『休む』を選択すれば一瞬で回復するため、基本的にプレイヤーが部屋を使うことはない。宿屋で部屋を使用するには『滞在』コマンドを選択するのだが、こちらを選ぶプレイヤーの目的はほとんどがセックスか、ほかのプレイヤーに聞かれたくない話をするか、だ。 「へー、時間選べるんだ。上限いっぱいまででいいよね?」  当然のように聞かれ、小さく頷く。自分の身体じゃなかったとはいえもう何度も彼とは身体を重ねているのに、緊張で手が汗ばむ。シュンはくすっと笑ってさらに操作を続けた。 「一緒に入る人は……と。フレンドじゃないから今同じ施設内にいる、ナギ……ってどれ」 「ん? あー、漢字で渚ってやつ」 「あったあった。これね」  ナギという呼び名は知っているのに、彼は俺のちゃんとしたプレイヤー名を知らないようだ。そのあたりも聞かないといけないなと思いながら、シュンに手を引かれ部屋へと向かった。

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