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番外編② 現実ではじめまして・中編①

(……知らない天井だ)  ぼんやりとした頭にそんな言葉が浮かぶ。日の光が隙間から差し込んでいるカーテンも知らない色だし、包まっている布団も知らない匂いだ。  リアルな夢だなと思いながら寝返りを打つ。そのまま目を閉じようとしたが――逆に思い切り見開いてしまった。 (……っ!? あ、そうだ……)  一気に覚醒した頭で、ここがどこなのか、どうしてここにいるかを思い出す。それと同時に、目の前にいる人物が目を開いた。 「……お、おはよう?」  声をかけると、目の前で俺と同じようにベッドで横になってる人が、人形のように美しい顔でふにゃりと笑った。 「おはよ」  寝起きの少し低いセクシーすぎるイケボで、寝起きなのにイケメンすぎるこの男こそ、俺たちが今いる部屋の主である季春だ。  ゲームの一枚絵のような完璧な寝起き姿に見惚れていると、季春の顔がゆっくりと近づいてくる。後頭部に手を添えられ、ゆっくりと唇が重なった。キスの合間に唇を舐められ、合図に口を薄く開けば舌がぬるりと口内に入ってくる。 「ん、ふぅ……♡」  朝から濃厚な口づけをされ、心臓の鼓動が早くなっていく。寝起きなのも気にせずにたっぷりと唾液を絡めて貪り合う。少しだけ目を開ければ、甘く優しい瞳と視線が絡む。 (なんか、恋人みたいだな……)  夢見心地になりながら季春の背中に腕を回して甘すぎる寝起きを享受する。身体をくっつけて足を絡め、吐息ごと唾液を飲みこみ合う。  互いの口元が唾液でべたべたになるころ、季春の唇が離れていった。 「今、何時……?」  身体を起こした季春がスマホを取り出し時刻を確認すると、もう昼すぎだった。たしかにカーテンから差し込む日はとても明るい。眠りについたのが遅かったのもあり、遅めの土曜日がスタートした。  *  俺の服もまぜて洗濯機にかけている間、季春が昼飯を用意してくれた。昨日作り置きしたと言って出してきた料理は、おしゃれなレストランのような盛り付け方。ひと口食べてみると、味も絶品だ。俺も自炊はする方だが、レベルが違いすぎる。 「うまっ」 「そう? よかった。いっぱい食べてね」  にこにこと微笑みながら季春もご飯を口に運ぶ。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、俺は目の前のイケメンを見る。こんな料理も上手くて見目麗しくてイケボな人間に会いたい、抱きたいと言われたなんて、彼とゲーム内で出会う前の俺に言っても絶対に信じないだろう。  昼食も終わり、季春が洗い物をしている間に俺は洗濯物をベランダに干していく。なにもせずにいるのは気が引けて手伝いを申し出ると、それじゃあと頼まれたのがこれだ。彼の服の隣に自分の服をかけていると、穏やかな陽気が降り注いで心までぽかぽかしてくる。こんな日にする昼寝は最高なんだよな、なんて考えながら残りの洗濯物も干していく。  洗濯かごに入っていたものをすべて干し終えた俺は、うっかり明日忘れないようにしないとな、と考えながら部屋に戻った。 「終わった? ありがとー」  先に洗い物を終えていた季春が部屋に戻ってきていて、俺から洗濯かごを受け取る。その際、すり、と指で手の甲を撫でられて身体が跳ねてしまう。当たっただけだろうと思っていたのだが、かごを受け取った彼は空いた手で俺の腰を撫でてくる。 「んっ♡ なんだよ、急に……っ」 「ふふ、今日はもうすることないし……昨日の続き、しようかと思って」 「へ……こんな、まだ昼すぎ……だし……♡」  先ほどベランダでぽかぽかとした日の光を浴びたくらい、まだ日は高い。起きたのが遅いとはいえ、こんな時間からセックスなんて。そう思うのに、身体にどんどん熱が宿っていく。  腰を撫でていた手が下がり、むにむにと尻たぶを揉まれる。顔を寄せられて耳に息を吹きかけられ、頬が熱くなっていく。 「昨日おあずけしちゃったし、今日はたっぷり慣らしてチンコ挿れてあげないと」 「あ……♡ 季春の、おっきい、ちんぽ……、ん……っ♡」  とろける声で耳に流し込まれる言葉に、頭がくらくらしてくる。昨夜見たちんぽを思い出し、息が荒くなっていく。 「ふふ。チンコって聞いただけでこんなにやらしい顔してるのに……やなぎは、夜まで待てるの?」  意地悪な声でくすくす笑われるが、言い返す気は起こらない。自分でもちょろすぎて呆れてしまうくらいにゲーム内で季春にたっぷりと快楽を教え込まれた脳は、軽い誘いやちょっとした言葉で理性を溶かしてしまう。  俺は季春の目をまっすぐ見つめる。彼の目にも欲の色が浮かんでいた。 「……待てない♡ 今から、いーっぱいセックスしたい♡」  満足そうに笑う瞳にさらに熱が宿ったのがわかり、彼の瞳に映る俺も恍惚とした笑みを浮かべていた。 「準備はどうしよっか。僕がしてあげるよ?」  そう尋ねられ、少しだけ理性が戻る。さすがに、あんなことを季春にさせられない。 「大丈夫。自分でするから……」 「えー? 遠慮しなくてもいいのに。調べたからできるよ?」 「いい、大丈夫……!」 「ふふ。じゃあ、今日は諦める。また今度……ね♡」  色気たっぷりの笑みで言われる。今日は、とか、また今度、とか。さすがに本気ではないだろうけど、心臓に悪い。俺は身体中が熱くなるのを感じながら風呂場に繋がる洗面所に駆け込んだ。  はっと我に返り、廊下に出て季春に風呂場を使っていいか尋ねる、もちろんと笑いながらバスタオルを持ってきてくれた。

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