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月下の追走6

 リズさんとアルドさんの家には俺が案内した。レオニスさんが家を訪ねてきたことに2人はびっくりしていた。そうだよな。伯爵様が家に訪ねてくるだなんて予想もしていないだろうし。 「アルド。リズ。タクヤに良くしてやってくれて礼を言う。感謝する。ただ、急だが私は領地へ戻ることになった。タクヤはアルドの手伝いをしたいというのだが、タクヤには私の仕事を手伝って欲しいので一緒に行くことにした。そうすると2人に迷惑をかけるだけになってしまうのだが、理解して貰えないだろうか。タクヤを連れて行くのは私が勝手に決めたことで、タクヤは悪くないのだ」  レオニスさんは角が立たないように、俺がレオニスさんについていくのは、あくまでも自分が勝手に連れていくのだと言っている。そうすることで俺が悪いわけではないということにしてくれているんだ。  リズさんとアルドさんはレオニスさんの言葉に一瞬、顔を見合わせたけれど、すぐにアルドさんはレオニスさんの顔を正面から見て言った。 「今日1日でも手伝って貰えて助かりました。タクヤは真面目に働いてくれるから残念ですが、伯爵様のお仕事も手伝いというのは私たちのような小売業とは違い大変だと思いますが、きっといいアシスタントになると思います。タクヤ。今日1日助かったよ。明日からは伯爵様の手伝いを頑張ってくれ」 「アルドさん……。ごめんなさい」 「謝ることはないのよ。また王都へ来ることがあったら顔を見せて。元気でね」 「リズさん……ありがとうございます」 「アルド。リズ。感謝する。それでタクヤのために部屋を借りてくれたというが、これで足りるだろうか」  そう言ってレオニスさんは金貨を渡す。 「十分足ります」 「そうか。本当に今回は2人に迷惑をかけた。すまなかった」  レオニスさんはそう言うと2人に頭を下げた。リズさんとアルドさんは慌てた。そうだろう。伯爵様が庶民に頭を下げているのだから。 「頭をあげてください。今日1日だけだって十分助かりましたから」 「ありがとう」 「それより、議員を引退なさるのですか?」 「そのつもりだ。しかし、私の後を継ぐ者はいる。その者たちが戦ってくれるはずだ」 「そうですか。伯爵様が引退なさるのは寂しいですが、今までありがとうございました」  レオニスさんがいなくなるのを惜しんでくれる人がいる。それで今までレオニスがどれだけ庶民に寄り添っていたかがわかる。 「しばらく屋敷には使用人がいるので、もしなにかあれば今まで通り言ってくれても構わない。私から仲間に話しをする」 「ありがとうございます」 「では夜分、失礼した」 「いいえ。お体に気をつけて」 「ああ。ありがとう。リズとアルドも元気でな」  そう言って俺とレオニスさんはリズさんとアルドさんの家を後にした。そして、ゆっくりと馬車へと戻る。もう王都へ来ることはないんだろう。でも、今日1日市場にいて楽しかった。もしまた王都へ来ることがあったらまた市場へ来よう。 「さあ屋敷へ帰ろう」 「はい」  俺たちを乗せた馬車はゆっくりと王都を後にした。そして俺は訊いた。 「領地へはいついくんですか?」 「数日中には行くつもりだ。ニコラスに荷をまとめて貰って、それができたら行く」 「荷造りなら俺も手伝います」 「タクヤはなにもしなくていい」 「いいえ。荷造りって結構大変なんですよ。それと、王都を離れたらみんなどうするんですか?」 「ニコラスと数人のメイドは残しておく。私との連絡があるかもしれないからな」  ああ。さっき言ってたな。なにかあったら今まで通り屋敷に来てくれって。俺としてはニコラスさん、アベルさん、クララさんにはお世話になった。中でもアベルさんは一番お世話になったし、仲良くしてくれた。アベルさんと離れるのは寂しい。 「アベルさんはどうなるんですか?」 「数人とは言え、使用人がいるからアベルにはしばらくいて貰う。そのうちどこかの屋敷に移るかもしれないが」 「そっか……寂しいな」 「向こうへ行けば、また別の料理人がいる。以前は王都のレストランで修行していた男だ。アベルに負けず劣らず料理は美味い。気さくな男だからすぐに馴染むだろう」 「そうだといいな……」  アベルさんはルナの食事にもすごく気をつけてくれていた。ほんとに優しい人だ。領地の料理人さんとも仲良くなれるといいな。  

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