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帰還の魔道士2
王都の屋敷を出たのは3日後だった。ニコラスさんやメイドさんがテキパキと荷をまとめてくれて、そしてレオニスさんは改革派の仲間の議員さんに挨拶に回っていた。庶民救済というのは今後も変わらないが、議員は辞めたいと思っていることを伝えてきたと言っていた。そして俺は最後にもう1度市場へ行き、リズさんとアルドさんに挨拶に行き、アルドさんは遠慮していたけど、アルドさんの手伝いをして帰ってきた。もしまた王都へ来ることがあったら、リズさんとアルドさんのところへ真っ先に行こうと心に決めた。
荷物をグリフォンに乗せ、最後にみんなの顔を見て挨拶をする。みんなは目を潤ませながらもレオニスさんに挨拶の言葉を言い、俺にも挨拶してくれた。俺はただの客人なのに。だから、それに俺は泣いてしまった。
「また、和食を教えて下さいね」
アベルさんが笑顔でそう言ってくれた。戻って来るかはわからないのに。それが嬉しくて俺も言葉を返した。
「また一緒に作りたいです。そして俺にも料理を教えて下さい」
そう返して握手をした。ほんとにアベルさんはいい人だ。機会があればほんとにまた一緒に料理をしたいと思う。
「またお帰りください、旦那様」
ニコラスさんのその言葉に屋敷のみんなは頭を下げた。レオニスさんは一人一人にありがとうと言ってグリフォンに乗った。ルナは俺が片手に抱き、俺は片手でグリフォンに捕まり、俺のことは後ろからレオニスさんが支えてくれた。グリフォンがゆっくりと羽ばたくと、みんなは頭をあげて、手を振って見送ってくれた。
「俺、屋敷のみんなのこと好きです」
グリフォンに乗るのが2度目だからか、それとも体調が良いからか後ろに乗っているレオニスさんに俺は話しかけることができた。
「そうか。みんなもタクヤのことは好きなようだ。それはタクヤが分け隔てなく誰にでも笑顔で接するからだろうな。領地の使用人もみんないい者ばかりだ。きっとすぐに仲良くなれるだろう」
「そうなんですね。ちょっと緊張はするけど、でも早く会ってみたいです」
そうだ。今度はまた新しい人たちに囲まれるんだ。みんなと仲良くできたらいいな。それはちょっと緊張もするけれど、同時に楽しみでもあった。俺が一番関わるのは、俺のお世話をしてくれるメイドさんと執事さん、それと料理長さんだ。その人達が優しいといいなと思う。
「あの。あのときの遺跡に寄ることはできますか?」
あのときの遺跡。俺とルナがこの世界で最初にいたところ。もしかしたら帰還の手がかりがあるかもしれない。そう思って訊いてみた。
「では休憩がてら寄っていこう」
あの遺跡に着いたのは、レオニスさんがそう言ってくれてから10分ほど飛んだ後だった。レオはゆっくりと遺跡の近くに着陸した。するとルナは真っ先に俺の腕から抜け出した。それから俺とレオニスさんが続いて降りる。ルナは俺の腕の中で微かに震えていたから怖かったのだろう。ビビリなやつだから。
「あのときは体調が悪くてよくわからなかったけど、ここまでグリフォンで飛んでも結構距離があるんですね」
「そうだな。それなりの距離はある。それでもペガサスで来るよりは断然早いが」
そういえばペガサスよりもグリフォンの方が早いし、荷も積めるって言ってたな。今日もそれなりの荷物を積んだ上に俺とレオニスさんが余裕で乗っているから、荷が積めるっていうのは納得できる。
俺とレオニスさんが遺跡の入口に座って話しをして、ルナは俺の足元でうとうとしている。そして風が吹いた瞬間、ルナの鈴がちりんと鳴り、淡く光った。
「え?」
「光っているな」
その光は、この世界に来てから見た中で一番大きな光ではあった。それでも、ルナを取り巻くのがやっとの大きさではあったけれど。やっぱりこの遺跡は元の世界と繋がっているのだろうか。でも、そうだとして俺は元の世界に戻りたいんだろうか。両親がいる。弟がいて、友達もいる。でも、帰るということはレオニスさんと離れ離れになるということだ。俺はそれを受け入れられるんだろうか。
「帰りたいと思うか?」
「わかりません。でも、レオニスさんの傍にいたいとも思うんです」
「……」
「それに、帰る方法もわからないし」
「無理はしなくていいんだぞ」
「無理はしていません。ほんとにわからないんです」
「そうか……」
レオニスさんはそう言って、広がる遺跡に目をやった。帰る方法はわからない。それは確かだ。でも、ルナの鈴が今までで一番大きく光ったことを考えると、思っていた通りこの遺跡があの世界に繋がっているのかもしれない。
「異世界人か……」
どこからともなく聞こえてきた声に、俺とレオニスさんは目をやった。
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