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鎖と誓い2
ある晩、俺は夜中に目が覚めた。そして、隣で寝ているはずのレオニスさんが、ベッドの縁に座って額を抑えていることに気がついた。そして、小さな声で何かを言っている。なんて言っているんだろう? そう思って耳をすませた。
「自分のせいで彼らが処罰されていたら…」
王都に残してきた仲間のことを気にしているようだ。
もし王都の仲間が処罰を受けたりしていればレオニスさんの耳に入るだろう。でも今のところ王都からそんな連絡はない。だから大丈夫だろうと俺は思っている。でもレオニスさんとしては気になるのだろう。俺としては処罰よりも軽度の嫌がらせ等があるんじゃないかと思っている。嫌がらせくらいならわざわざ王都から知らせがくることはないだろうし。ほかの貴族の人がどうかはわからないけれど、ヴァルター侯爵あたりは嫌がらせをしていそうだし、敵にしては厄介だ。リシアさんはヴァルター侯爵の姪だと言っていたから、縁者に魔法使いがいるということだ。だとしたら魔法で嫌がらせとかしそうだな、と思った。でもそんなことをレオニスさんに言ったら余計に気になって、ほんとに夜眠れなくなりそうだから俺の胸にしまっている。
「眠れませんか?」
俺がそう声をかけると、レオニスさんはびくりと肩を震わせたあと、ゆっくりと俺の方を向いた。
「すまない。起こしてしまっただろうか?」
「いいえ。自然と目が覚めただけです。今何時だろう。まだまだ外は真っ暗だから、朝にはほど遠いでさすね。寝ないと体にこたえますよ」
「そうだが……」
寝たいのに眠れないというところだろうか? さて、どうしたものか。一度吐き出した方がいいのだろうか。俺ができるのは話を聞くくらいだけど。
「王都に残してきた仲間のことか心配ですか?」
「……ああ。私がいない方がいいと思ったけれど、ヴァルター侯爵とオマンド子爵のことだ、何をするかわからないと思ってな。嫌がらせくらいは普通にやるだろうし、罠をかけたり処罰されたりということもないとはいえないと思ってな」
レオニスさんもヴァルター侯爵が嫌がらせをすることは考えたのか。そんなことをする大人。しかも爵位が高い人がするんだから俺から見たらガキっぽいと思う。そして、そんな人のためにレオニスさんがよく眠れないなんて、俺としては腹が立つ。
「でも何かあれば王都から連絡があるでしょう? 王都の屋敷はもちろん、仲間からも」
「ああ。仲間には何かあれば連絡するように言ってきたし、ニコラスにも言ってきた。その上で連絡がないのだから大丈夫だと思うんだが、夢を見てな」
「夢?」
「そうだ。仲間が処罰されている夢を繰り返し見るんだ」
繰り返しそんな夢を見たら、それは起きてしまうだろう。でも俺に言えることはさっきと同じことしかない。何かあれば王都から連絡がある、と。もちろんそんなことは気休めにしかならないからレオニスさんには言わないけれど。
「それだけ仲間の人を心配しているんですよね」
「ああ。それに保守派と言えば聞こえはいいが貴族のためにならないことはとりあえず反対するという貴族は多いんだ」
「それはヴァルター侯爵派だけとは限らないということですか?」
「そうだ。貴族院は貴族と王族のことだけを考える場だと思っている人間が多いんだ」
それを聞いて俺はびっくりした。敵はヴァルター侯爵派だけだと思っていたら、それだけではないなんて。この国の貴族はクズが多いんだなと思ったらイライラしてきた。
「ヴァルター侯爵とオマンド子爵の力が弱くなったら周りの貴族が変わることはありませんか?」
「一定数はいるかもしれないが、どれだけいるかはわからない……」
「貴族のためにはならなくても害にはならないと知ったら反対する人も減るのでは? それこそ、庶民が豊かになって、それで自分の領地が潤えば貴族のためにもなります。そうしたら反対派は減るはずです。そのためには、この領地がお手本になればいいのでは?」
「そうか。そこには考えが及ばなかった。すごいなタクヤは」
「いいえ。俺は第三者視点で見えるから。さあ、そうとなったら明日もやることは多いはずです。もう一眠りしましょう」
「そうだな。タクヤ、ありがとう」
そう言ってレオニスさんは隣に横になった。レオニスさんが朝までゆっくり眠れますように。そう願ってから俺は目を閉じた。
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