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鎖と誓い3
次の日の朝、レオニスさんの目は赤かった。もしかしたら、あの後も眠れなかったのかもしれないと思い訊くと、ウトウトと寝たという。ウトウトか……。きちんとは眠れなかったんだな。もしかしたら今までも昨夜みたいなことはあったのかもしれない。
ダイニングで朝食を食べながら今日の予定を聞いているとオレンジ農園へ行って、他の領地や王都へ送る食べ方のアレンジを考えるらしい。
「それ、俺も一緒に行っていいですか?」
「ああ。タクヤの意見も聞きたいからな」
「これ、レオニスさんの理想に近づくことですよね。俺、レオニスさんの理想好きです。誰も飢えない国にしたいって。この国のことを誰よりも考えているし、なんだか実現できそうで」
俺がそう言うと、レオニスさんは目を大きく見開いた。まさか俺がそんなことを言うとは思わなかったのだろうか。でも、一生懸命、庶民の声を聞いて議会に提出しているのを見ていると、時間はかかるかもしれないけど、いつか叶いそうな気がしていたんだ。甘い考えなのかもしれないけれど。
「……ありがとう。その言葉を聞けただけで、生きてきた意味がある」
「俺の国のことわざに、急がば回れっていう言葉があるんです。庶民を豊かにするのに、地方から始まったっていいと思うんです。まずはこの領地から豊かにしていきましょう」
「急がば回れか。そうだな。諦めずにやっていくしかないな」
「はい。オレンジ農園楽しみだな」
庶民って市場やお店をやっている人ばかりではないけれど、まずはそこを豊かにして、会社勤めの人の給与もあげていく。それには国が補助金を出したりする必要があるかもしれないけど。でも、それでできないかな。国の補助金に関しては改革派のレオニスさんの仲間の人たちに頑張って貰うしかないけど。でも、市場やお店といった小売業を豊かにするには、その領地ごとに頑張って貰うしかない。そしてその波が王都に届けば……。できないことではないと思うんだ。レオニスさんの理想のために俺ができることは手伝おうって思ってる。まぁ、半分は視察を楽しんでいるだけだけど。
朝食を終え、着替えを済ませるとレオニスさんと馬車でオレンジ農園へと赴いた。オレンジの木がたくさんでオレンジのいい匂いがする。食べたくなっちゃうなぁ。
農園に着くとレオニスさんはまず出来具合を農家の人に聞いていた。今年は天気もよく豊作だという。だから、この領地で売って、他は王都や他の領地へと輸出するにしてもまだ余るらしい。現代日本ならネットショッピングがあるけど、ここではインターネットがないからなぁ。カタログを作って、それで売るっていう手もあるけど、それにはまず、どうアレンジするかだよな。
「アレンジはどうしている?」
レオニスさんがそう訊くと農園の人はジャムやマーマレードにしているという。ジャムやマーマレードもいいけど、お菓子はダメなんだろうか? 一般家庭はわからないけれど、王都の屋敷には冷蔵庫はあった。そうしたら一般家庭はなくてもお菓子屋さんやケーキ屋さんには冷蔵庫はあると思うんだ。他のお菓子にして王都のケーキ屋さんやお菓子屋さんに出すというのはいいと思うんだけど。そう思ってレオニスさんに訊いてみた。
「お菓子にして王都で売るのはどうですか? 王都で売れたら他の領地に輸出してもいいし」
「お菓子か。例えばどんな?」
「ケーキとかオレンジピールとか」
「だが、ケーキは王都で既にオレンジを使ったタルトなどがあるはずだが」
「確かにそうですけど、ここで作って出荷するのは新鮮なので王都で売っているのより美味しいと思うんです。それをカタログにして王都あたりでカタログを配ればいいんじゃないかな、って」
「カタログか。王都の市場に置いてもいいな。リズやアルドの八百屋ならいいだろう」
「そうですね。レシピを書いておくのもいいし、ここからのお取り寄せにするのもいいと思います」
「それはいい案だ。まず、どんなレシピがあるか考えて、それから2人に打診してみよう」
レオニスさんはすっかりやる気になり、農園の人も、それはいいと頷いていた。みんなの明るい表情を見て、俺も少しは役に立てるんだなと嬉しくなった。
「タクヤ。なにかオレンジを使ったレシピはないだろうか」
「うーん。一般的なのしか思いつかないけど、パウンドケーキやロールケーキ、タルトやケーキあとはオレンジピールとかゼリーやパンナコッタ、フルーツパンチやスムージーくらいかなぁ?」
「オレンジピール? フルーツパンチ? スムージー?」
あ。その辺はここにはないのか。でも、ピールの作り方は既にないだろうか?
「ピールはお菓子屋さんや女性なら他の果物での作り方を知っていると思うんです。それをオレンジでやるだけなので難しくはないと思いますけど、ピールってないですか? あと、フルーツパンチやスムージーは簡単ですよ」
そう言って俺はフルーツパンチやスムージーの作り方を伝えた。スムージーはミキサーがあるかないかで少し違うけれど、基本は対して変わらない。
「そのスムージーというのはオレンジ以外でもいいのか?」
「はい。野菜というのもありですよ。スムージーは健康にいいと言って俺のいたところでは人気でした。スムージーの屋台やお店があったら流行るかもですね」
そう言うとレオニスさんはそれはいい、と顔を明るくした。その顔を見て俺はホッとした。
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