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夜明けの救出6

 グリフォンは大きいから、その背に乗るだけでも高い。でも、乗ったことがあるので怖いとは思わない。  俺がグリフォンに乗ると、リズさんたち市場の人たちとリカルドさん、ホセさんと、今回手を貸してくれたみんなが俺とレオニスさんを見上げる。 「伯爵様。まずは領地へ戻ってゆっくりなさってください。タクヤもね」 「リズ、そしてみんな。今回はありがとう。世話になった。」 「いつも伯爵様には助けて貰っているんですから、少しでも借りが返せたのなら良かったです。でも、一番頑張ったのはタクヤですよ」  アルドさんがそう言う。みんなほんとにレオニスさんを助けられて良かったという表情をしている。俺が頑張ったというけれど、俺こそレオニスさんにお世話になりっぱなしなんだから当然なんだけど。 「ありがとう、みんな。私は領地に戻るが、なにかあれば屋敷のニコラスに言ってくれ」 「いつもありがとうございます」 「挨拶はいいが、そろそろ行った方がいい。人目についたら困る」 「そうだな。じゃあ今回はありがとう」 「お気をつけて」  その言葉が合図となり、グリフォンは大きく翼を広げた。風が巻き起こり、草が波打つ。 「タクヤ行くぞ」  レオニスさんの声が夜に溶ける。次の瞬間、地面が静かに、だけど確実に遠ざかった。風を裂く感覚。体が宙に持ち上げられ、丘が見える。王都の灯りが遠くに瞬いている。あの中に牢獄も、陰謀も、恐怖もある。とりあえずそこから逃れられることが出来てホッとする。 「……助けに来てくれてありがとう」  背後からレオニスさんの声が聞こえる。小さな声だったけれど、俺の耳にはしっかり聞こえた。 「いいえ。俺はみんなと同じで、いつもレオニスさんにはお世話になっているので。だからお礼なんて必要ありません」 「それでも、タクヤが来てくれたから、今ここにいる」  夜空に向かいながらそう言われる。グリフォンは翼を打ち、さらに高度を上げる。夜明け前の空は深い群青色だった。追手も警鐘もない。ただ風の音だけが耳を満たす。生きている。今、ここに。レオニスさんと一緒にいる。それだけで胸がいっぱいだった。みんなの力を借りてだけど、レオニスさんを助け出すことができて良かった。領地へ行く前に屋敷に寄りたかったけれど、夜が明けてしまったらまずいので、寄ることが出来なかった。でも市場のみんながきっと伝えてくれるだろう。 「今日は休憩を取らずに領地へ行く。少し辛いかもしれないが我慢してくれ」  飛んでしばらくしてからレオニスさんの声が聞こえた。きっと夜が明ける前に領地へ着きたいのだろう。そう思って俺は頷いた。 「大丈夫です」  俺は大丈夫だけど、ルナは大丈夫だろうか? ビビリな奴だから荷物とレオニスさんに挟まれて震えているんじゃないだろうか。抱いてやれればいいけど、片手にルナを抱いて、片手でグリフォンに掴まるなんてそれこそ危ない。ルナのためにも早く領地に着く方がいいだろう。  そこで俺は考えた。レオニスさんはなんとか奪還したけれど、物事が全て収まったわけではない。きっと裁判とかで再び王都へ行かなくてはいけないだろう。そのときにレオニスさんが反逆者なんかじゃなく、ヴァルター侯爵やオマンド子爵の方が不正をしているということを証拠として出さなくてはこの件は終わらない。でも、どうやったら不正の証拠を集められるんだろう。きっとレオニスさんはその件でなにか動いているかもしれない。なにもせずにいるとは考えられない。この件については領地へ着いたら話しをする必要がある。  そしてそこまで考えて、俺は思い至った。俺はどうするんだろう。元いた世界に戻る方法はわかった。でも、そのまま帰っていいのだろうか。レオニスさんは? 帰ったら、もう2度とレオニスさんに会うことができなくなる。俺はほんとにそれでいいのか? レオニスさんに会えなくなることを考えたら、気が狂いそうだ。だって俺は本気でレオニスさんが好きだから。レオニスさんのいない世界は考えられない。そうしたら家族や友人と2度と会えなくなる。どちらを選んでも、誰かとは会えなくなるんだ。そうしたら、今後の人生はほんとに心から大切だと思う人と過ごそう。それは誰かと言えばレオニスさんだ。そう思わなかったら、わざわざ危険を冒してまで牢獄へと入って助け出したりはしない。見殺しにすればいいことだ。でも、俺はそうすることができなかった。失敗したら俺も牢獄へと入れられる。それでも助けたかった。そこで答えは出ていたんだ。幸いこの世界にはルナもいる。実家を離れている俺にとってはルナは最も身近な家族だ。ルナがいてくれて、レオニスさんもいる。それで十分じゃないか。そう思ったら俺はすっきりした。

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