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静かな朝の誓い1
王都から領地へは休むことなく飛んできた。領地の屋敷の庭にグリフォンが着地すると、真っ先にルナが飛び降りる。レオニスさんが体でルナが落ちないようにしてくれているにしても、平らなところじゃないから、ルナとしては怖いのだろう。俺がグリフォンに乗るから仕方なくグリフォンに乗っているだけで、好んで乗っているわけじゃないし。飛び降りたあとは、グリフォンから一目散に逃げている。今も、すごい勢いで屋敷に入っていた。ああ、また足拭いてない。あとで拭かなきゃ。
「旦那様! お帰りなさいませ」
玄関を開けて中に入ると、執事のフェルナンドさんがレオニスさんに気づき、挨拶をする。そしてその声を聞いた他の使用人の人も「お帰りなさいませ」と口々に声をかける。王都でレオニスさんが投獄されたことは屋敷の人もみんな知っているだろうから、突然のレオニスさんの帰還に驚いているようだった。そうだよな。俺が今夜奪還したことなんてこの屋敷の人にはわからなかったことだから。王都から知らせの人が来るにしたってグリフォンで来る人は少ないから、俺達より早く着くなんてことは不可能だ。だからびっくりするのは当たり前だ。屋敷の人は、レオニスさんが投獄されたことしか知らないだろう。
「旦那様、ご無事でなによりです」
「ああ、私は大丈夫だ。タクヤに助けられた」
「タクヤ様が……。タクヤ様。旦那様を助けていただき、ありがとうございます」
「いえ。王都の市場の人たちが協力してくれたからです。俺1人ではなにも出来なかったから」
「それでも、市場の方にお声がけをしてくださったのでしょう。それだけでも十分なことです」
「俺、レオニスさんに助けて貰っているから、わずかばかりの恩返しです」
「私はなにもしていないよ。ところでフェルナンド。私はお前の紅茶が飲みたいのだが、淹れてはくれないだろうか?」
「私としましたことが、気づきませんで申し訳ございません。ただいまご用意致します」
「では書斎に持ってきてくれ。ああ、私の荷物も服以外は書斎へ」
「かしこまりました」
フェルナンドさんは驚いて、お茶を淹れることを忘れてしまって、急いで紅茶を淹れに行った。そしてメイドさんたちがグリフォンから荷をおろしてくれたので、俺は自分の分の荷物は受け取り、レオニスさんの荷物は洋服とそれ以外の荷物に分けられ、洋服はレオニスさんの寝室へと運ばれた。レオニスさんは俺を書斎に俺を呼んだ。王都の屋敷の書斎には入ったことはあるけれど、ここ領地の書斎に入るのは初めてだった。部屋の感じは王都の書斎と変わらない。壁は一面の本棚になっていて、本で埋まっている。そして窓寄りの部屋の中央には立派な机が置かれていて、部屋の隅にはソファーとテーブルが置かれている。レオニスさんに促され、俺はソファーに座り、レオニスさんと向かいあう。
「タクヤ。私が投獄されたあと、ヴァルター侯爵派の者が家宅捜索に来なかったか?」
「来ました」
「そのとき、タクヤは見ていた?」
「ニコラスさんと見てました」
「帰りになにか持って行かなかったか?」
「なにも持っていってません。収穫がなかったって文句言ってましたから確かです」
「そうか。気づかなかったのか。私の荷物はニコラスが片付けてくれたんだろう?」
「はい。ニコラスさん1人で」
「としたらここにはないかもしれないな」
レオニスさんは呟くようにそう言った。そして、紅茶を持って来たフェルナンドさんはワゴンに紅茶を乗せて持ってくる一方で、手には古い封筒を持っていた。
「紅茶をお持ちいたしました。それと、服の中にこのようなものが入っておりました。なにやらニコラスが入れ間違えたのかと」
フェルナンドさんから封筒を受け取ったレオニスさんは、中身を確認する。
「これだ! 服の中にあったのか」
「はい。荷解きをしていたカタリナが見つけました」
「そうか。ニコラスがか。さすがだ」
「入れ間違えではないのですか?」
「恐らく違う。わざとだ」
フェルナンドさんは少し考える仕草をしたが、それなら良かったと言った。封筒を手にしたレオニスさんの目には闘志のようなものが見えた。よほど大切なもののようだ。そしてフェルナンドさんが書斎を出ていくと、レオニスさんが言った。
「タクヤ。そのうちまた王都へ行くことになる」
「そんな! そんなことをしたら、また捕まってしまいます!」
「大丈夫だ。その前にヴァルター侯爵とオマンド子爵を弾圧する」
ヴァルター侯爵とオマンド子爵を弾圧する? そんなこと出来るのか? 俺がそう疑問を持っていることにレオニスさんはわかっているようで言葉を続けた。
「それには私の仲間にひと働きして貰う必要があるから、あとで王都へ連絡をやらなくてはいけないが」
「もう捕まらないのですね?」
「ああ、大丈夫だ」
「それなら、俺も一緒に行ってもいいですか?」
「ああ。タクヤも見守って欲しい」
レオニスさんがなにを言っているのか俺にはわからないけれど、なにかあるのだろう。俺としてはレオニスさんが掴まることがなければいい。
「わかりました。俺も行きます」
「ああ。一緒にいてくれ。仲間からの連絡があり次第王都へ行く。そして、場合によってはタクヤにも証言を頼むこともあるかもしれない」
俺が証言をする? なにを証言するんだろう? わからないけど、なにか重要なことだと思うし、それでレオニスさんが優位に立てるのならなんだってする。だから俺は「はい」と頷いた。
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