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静かな朝の誓い3

「湖、ですか?」 「ああ。最近はなにかと心が休まない日が続いていたし、改革派の仲間から連絡があれば、また王都へ行かなくてはいけない。そうしたら、精神的にかなりのストレスになると思う。今日は天気もいいし、ピクニック日和だと思うんだが、どうだろうか?」  確かに初めて市場へ行って、帰りに賊に襲われて以来、精神的にかなりのストレスの連続だった。それまではのんびりと過ごしていたのに。また王都へ戻るとレオニスさんは言っているし、王都へ戻ってなにをするのかわからないけれど、どう考えてものんびりと過ごせるとは思えない。そうしたら、つかの間の休日ということでピクニックへ行くのもいいかもしれない。レオニスさんがのんびりできればいい。 「近いんですか?」 「馬車で30分くらいだ」 「近いんですね。行きたいです」 「よし、ではフェルナンドに準備を頼もう」  そうして、フェルナンドさんに出かける準備をして貰い、30分後には屋敷を出ていた。そして馬車が着いたのは、綺麗で静かな湖で、誰もいなかった。水の色は綺麗なブルーで水が綺麗なことが見てとれる。この領地は海もあれば山もある。けれど、屋敷から海へは1時間ほどかかるというし、山へもそれくらいかかる。かなり広い領地だ。 「すごい! 綺麗!」 「水が綺麗だろう」 「はい」 「ここも綺麗だが、海も綺麗だ。そのうち海にも行ってみよう」 「はい!」  海、行ってみたいな。俺の生まれ育ったところは、ここと同じく湖があり、海と山もあるところだ。最も、湖も海もこんなに綺麗ではないけれど。 「俺の生まれ育ったところも、湖や海や山があるんです。懐かしいな」 「……そうか。本当に帰らなくていいのか?」  湖から少し離れたところに丸太があり、そこに腰掛けて話しをする。 「帰りたくないって言ったら嘘になります。でも、あなたといたいと思うんです。ここと俺のいたところと行き来ができればいいけど、それはできないし。それならあなたがいる場所を選びます」 「そうか。タクヤを幸せにしたいと思っている」 「俺はレオニスさんの傍にいられれば幸せですよ」 「しかし、私の揉め事にタクヤを巻き込んでしまっている。今のことが終わればいいのだが。申し訳ないが、もう少しだけ待っていてくれ。そうしたら全て終わるから」 「全て終わるんですか?」 「ああ。平和な日々が戻って来る」  平和な日々が戻ってくるのか。そうしたらレオニスさんも安心できるよな。でも、平和な日々が戻って来るのなら貴族院はどうするんだろう。次の国会には戻るかわからないって言ってたけど、ヴァルター侯爵とかいなかったら法案も通るんじゃないだろうか。そうしたら議員を辞めるなんてことをする必要もなくなると思うんだけど、どうなんだろう。 「そしたら議員を辞める必要はないんじゃないですか?」 「そうだな。庶民救済法案だけは通そうと思う。そのあとのことはそのとき考えよう。今は、疲れたとしか思えないからな」  疲れているのはやっぱりヴァルター侯爵派だよな。ヴァルター侯爵とオマンド子爵が失脚すれば、ほんとに静かになると思うんだ。でも、今は疲れたとしか思えないって当然だよな。今日、ここに来て、少しは心は休めているだろうか。ヴァルター侯爵が失脚すれば、リシアさんとの婚約は破棄できるんだよね? 破棄できたらいいな。レオニスさんは気が進まないようだし、俺も2人が結婚するのなんて見たくない。 「全てが終わったら、リシアさんとの婚約は破棄するんですか?」  レオニスさんがリシアさんを良く思っていないのを知っていて、念押しで確認してしまった。 「もちろんだ。私は結婚するのならタクヤがいい。タクヤにはこっちに残って貰うことになってしまうけれど」 「え?」  ”結婚するならタクヤがいい”今、そう言った? 結婚って男女だけじゃないの? 「俺、男ですけど、同性同士で結婚できるんですか?」 「できる。5年前に法案が通って、同性同士でも結婚できるようになった。だから、タクヤが元いた世界に戻らないというのなら、タクヤと結婚したい」  レオニスさんと結婚できる? 貴族と庶民でも大丈夫なの? 「俺、庶民だけどいいんですか?」 「貴族だ庶民だなんて関係ない。タクヤが私でいいならば、だが。私では嫌か?」 「嫌だなんてことありません! 庶民の俺でもいいのなら、俺は……」 「ありがとう」  そう言ってレオニスさんは優しく俺に口づけした。軽く触れあうだけの。でも、そんな口づけでも、レオニスさんの気持ちが伝わってきて、俺は涙が出てきた。 「タクヤ。どうした? 嫌だったか?」 「違う! 嫌なわけない! 嬉しくて……。俺みたいな庶民で、なんの取り柄もないのに」 「でも、私を助け出してくれた」 「あれは! 市場のみんなが協力してくれたからできたことです」 「全て落ち着いたら、市場の者には礼を返さなくてはいけないな。そのためにも、法案は必ず通す」 「みんなレオニスさんに助けて貰っているから、その恩返しだって言ってましたよ」 「そうか……」 「でも、お礼をするなら俺も一緒に行きます。あのときみんなが協力してくれなかったら助けることが出来なかったから」 「そうだな。2人で行こう」 「はい」  まだ全てが終わったわけではない。それでもそんな話しをしていると、そんな未来が必ず来ると思える。言霊だ。必ずヴァルター侯爵を失脚させて、レオニスさんと結婚する。そう思ったら、頑張ろうと力が湧いてきた。

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